セラピストとは、美容、医療、心理の各分野で、人々の身体や心のケアを行う人の総称です。そのため、セラピストと一言でいっても、分野や職種によって必要な資格や求められるスキルは大きく異なります。「セラピストに興味があるけれど、どの資格を取得すればよいのか分からない…」と悩む方もいるでしょう。
この記事では、美容系・医療系・心理系のセラピストそれぞれに役立つ資格について、取得方法や難易度も含めて解説します。自分に合ったセラピスト資格を見つけたい方は、ぜひ参考にしてください。
セラピストになるには資格が必要?
セラピストには美容系・医療系・心理系の3種類があり、資格の必要性は分野によって大きく異なります。
資格が必要かどうかは分野による
リラクゼーションサロンやエステサロンなど美容分野のセラピストになる場合は、必ずしも国家資格や公的資格は求められません。実際、資格は持っていないものの、民間スクールなどで技術を習得して働いているセラピストが多くいます。
一方、医療分野のセラピストになるには、国家資格の取得が求められます。あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などが、その一例です。
マッサージや指圧などは医療行為とみなされ、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)」や「柔道整復師法」により規制されています。資格を持たずに施術を行うと、違法行為になってしまうのです。
(出典:厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」)
また、人間の心にかかわる分野でセラピストとして活躍したい場合も、国家資格や公的資格を取得し、心の健康に関する専門的知識を習得することが望ましいでしょう。
セラピストの種類
美容系・医療系・心理系の各分野における、セラピストの業務内容は以下の通りです。
美容系 | リラクゼーションや美容を目的とした施術を行います。美容の知識と高い接客力を持ち、主にサロンやスパなどで働きます。 |
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医療系 | 治療や機能回復を目的とした、マッサージやリハビリテーションを行います。医療機関や福祉施設で働くほか、スポーツ施設などでインストラクター業務をする場合もあります。 |
心理系 | 心のケアやメンタルサポートを担います。医療機関や教育機関などで心理カウンセラーやスクールカウンセラーとして働くほか、企業カウンセラーとなり職場のメンタルヘルス改善を行うケースもあります。 |
一口にセラピストと言っても、分野や職場によって担う役割はさまざまで、必要な資格も異なります。セラピストの資格に興味があるなら、まずは自分がどの分野に進みたいのかを考えることが第一歩です。
美容系セラピスト向けの資格
美容系セラピストになるうえで、資格は必ずしも必要ではありません。ですが、資格を取得すれば、専門知識やスキルが身についていることを証明でき、就職で有利になる可能性があります。
ここでは、2つの美容系セラピスト資格について詳しく紹介します。
AJESTHE認定エステティシャン
AJESTHE認定エステティシャンは、エステティックの基本的な知識と技術を持つことを証明する資格です。日本エステティック協会(AJESTHE)が認定しています。
資格を取得するためには、AJESTHEの正会員となり、以下のいずれかの要件を満たした上で、試験に合格する必要があります。
- 協会認定校で300時間以上、または1,000時間以上のコースを修了する
- エステサロンで1年以上の実務経験がある
試験は、4肢択一マークシート式の筆記試験と、フェイシャル・ボディいずれかの技術力確認試験です。
合格率は公開されていませんが、基礎知識と一定の実務スキルがあれば十分に合格可能とされています。実務経験者やスクールに通える人にとっては、この資格は比較的取得しやすいものだと言えるでしょう。
(出典:日本エステティック協会「AJESTHE認定エステティシャン」)
アロマテラピー検定
アロマテラピー検定(2級・1級)は、アロマテラピーの基礎知識と安全な実践方法が身についていることを証明する資格です。合格に向けた学習を通じて、健康や美容のために正しくアロマテラピーを活用できるようになります。
資格を取得するには、日本アロマ環境協会が実施する試験に合格する必要があります。受験資格はなく、誰でもどちらの級からでも受験可能です。
試験はインターネット上で、選択回答形式で実施されます。2級・1級ともに、合格基準は正答率80%で、合格率は約90%です。問題は公式テキストから出題されるため、初心者でも独学での合格を目指しやすい資格だと言えるでしょう。
(出典:公益社団法人 日本アロマ環境協会「アロマテラピー検定」)
医療系セラピストに必要な国家資格
医療系セラピストとしてマッサージやリハビリテーションといった医療行為に携わるためには、国家資格が必須です。以下では、介護施設や病院などで働く医療系セラピストに必要な国家資格を、5つ紹介します。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師は、医療行為として正式にマッサージや指圧を行うことが認められた国家資格です。この資格を取得するには、高校卒業程度の学力を有し、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する養成施設で3年以上の課程を修了した上で、国家試験に合格する必要があります。
国家試験は160問の筆記試験で構成されており、合格ラインは正答率60%以上です。試験科目は、解剖学や臨床医学、東洋医学理論など幅広い分野を含みます。合格率は比較的高めで、2025年に行われた試験の合格率は87.2%でした。
資格取得後は、施術所に勤務するほか、経験を積んだ後に独立開業する道もあります。
(出典:東洋療法研修試験財団「過去の受験者数」, 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行」)
はり師・きゅう師
はり師ときゅう師の資格は、東洋医学に基づき鍼や灸を用いて心身の不調を整えるための国家資格です。それぞれ別個の国家資格ですが、両方の資格を取得し、鍼灸師として実務にあたる人がほとんどです。
資格を得るには、文部科学大臣または厚生労働大臣が認定する養成施設で3年以上、鍼灸に関する知識・技能を学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。
国家試験は、はり師・きゅう師ともに170問の筆記試験で、合格ラインは60%(102点)です。同時に両方の試験を受けることも可能で、その場合、共通科目の一部が免除されます。
2025年の合格率は、はり師試験が73.9%、きゅう師試験が74.9%でした。
(出典:東洋療法研修試験財団「過去の受験者数」, 職業情報提供サイトjobtag「はり師・きゅう師」)
柔道整復師
柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲などの外傷に対して、手技療法を行うための国家資格です。
資格を取得するには、大学入学資格を得た上で、厚生労働省認定の養成施設で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。
国家試験は筆記形式で、200問の一般問題と30問の必修問題が出題されます。合格基準は、必修問題80%以上かつ、全体60%以上の正答率です。2025年の合格率は57.8%でした。
(出典:厚生労働省「第33回柔道整復師国家試験の合格発表について」, 厚生労働省「柔道整復師国家試験の施行」)
理学療法士
理学療法士は、身体に障害を抱える人々に対し、動作改善や生活機能の回復を目的としたリハビリテーションを行うための国家資格です。
資格を取得するには、認定養成校で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。試験は年1回実施され、筆記試験に合格することで免許が交付されます。
2025年の合格率は89.6%、新卒者は95.2%でした。
(出典:厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について」, 厚生労働省「理学療法士国家試験の施行」)
作業療法士
作業療法士は、身体や精神に障害を抱える方に対して、日常生活に必要な動作や作業を通じて社会復帰を支援するための国家資格です。
資格を取得するには、指定養成施設で3年以上のカリキュラムを修了し、国家試験に合格する必要があります。
国家試験は筆記試験(マークシート式)で、一般問題80問・実地問題20問の計100問が出題されます。合格基準は両方の正答率が60%以上です。2025年の合格率は85.8%でした。
(出典:厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について」, 厚生労働省 試験情報)
心理系セラピスト向けの資格
カウンセリングなどの心理療法を用いて、相談者に助言や指導を行うのが心理系セラピストです。心理系セラピストの代表的な資格を2つ紹介します。
公認心理師
公認心理師は医療・福祉・教育・司法・産業など幅広い分野で、心理的支援を行うための国家資格です。2015年に「公認心理師法」に基づいて創設され、2018年から国家試験が実施されています。
資格取得方法には区分A~Fの7通りがあり、最短ルートは大学で4年間と大学院で2年間、指定科目を履修して国家試験を受験する区分Aです。
国家試験は筆記形式で、心理学の理論・支援・実践・倫理など多岐にわたる内容が出題されます。2025年の合格率は66.9%で、やや難易度が高い国家試験です。
(出典:厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」, 厚生労働省「第8回公認心理師国家試験 合格発表」)
臨床心理士
臨床心理士は、心理的な問題に対し臨床心理学の知識と技術を用いて支援を行う専門家であることを証明する資格です。日本臨床心理士資格認定協会が認定しています。
資格取得には、協会が認可する指定の大学院または臨床心理学の専門職大学院を修了し、年1回の資格審査に合格する必要があります。大学院の種類によっては、一定年数の心理臨床経験も必要です。
試験は、多肢選択方式・論述試験の一次試験と、面接試験の二次試験で構成され、心理査定・心理面接・地域援助に関する知識と実践力が問われます。2024年の合格率は66.1%でした。
(出典:日本臨床心理士資格認定協会「資格審査の実施」, 「臨床心理士」資格取得者の推移, 「臨床心理士資格認定事業」)
まとめ|活躍したい分野に合ったセラピスト資格の取得を目指そう
この記事では、セラピストとして働く上で役立つ資格について、美容系・医療系・心理系の分野ごとに紹介しました。
美容系ではセラピストに必須の資格はありませんが、医療系ではセラピストとして施術を行うには国家資格が必要です。また心理系では、セラピストになるには国家資格や公的資格の取得が一般的であり、大学や大学院での専門的な訓練が不可欠です。
セラピスト資格の取得を目指す際に大切なのは、自分がどの分野で活躍したいかを明確にすることです。どのようなキャリアを築いていきたいのかについても考えながら、ぜひ自分に合ったセラピスト資格を選択しましょう。
※当記事は2025年4月時点の情報をもとに作成しています
※掲載内容について情報が更新されている場合がありますので、必ず公式サイトにて最新情報を確認してください