「色彩検定ではどんな知識が問われるの?」「デザイン系の仕事でなければ、色彩検定を受けても意味はない?」など、色彩検定について気になっていませんか。
この記事では、色彩検定の級別の試験内容や勉強法、色彩検定を受けるメリット、活かせる仕事などについて詳しく解説します。色彩検定に関するさまざまな疑問を解消できる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
色彩検定とは?
色彩検定とは、色彩に関する幅広い知識や技能のレベルを測る検定試験です。公益社団法人色彩検定協会が実施しており、国家資格ではありませんが文部科学省後援の検定なので、信用度は高いといえます。
色彩というと、「色使いのセンスがいい/悪い」のように個人の感性と結びつけられがちです。ですが、色彩検定の内容を学習すれば、色に関する基礎知識から実務での生かし方までを理論的・体系的に習得できます。そのため、感性に頼るのではなく、色の理論や法則をふまえて色を効果的に使ったり組み合わせたりできるようになるのです。
色彩検定には、受検資格はありません。色彩に興味がある人なら、誰でも何級からでも受検できます。実際、受検者の職業はさまざまで、ファッションやデザイン系のほか、サービス業やIT関係の人、公務員・教職員、学生などが受検しています。
色彩検定は難しい?試験内容や勉強方法を級別に紹介
色彩検定は難しいのではないかと心配な人もいるでしょう。色彩検定には4つの級があり、自分に合った級を受検できます。各級の試験内容や勉強方法について詳しくお伝えします。
UC級
UCとは「色のユニバーサルデザイン」のこと。UC級は、色覚の多様性に配慮した適切な色使いができる知識と技能を証明する級です。1990年に始まった色彩検定の歴史のなかでは新しく、2018年に新設されました。
UC級の試験内容
色の見え方は人それぞれ違い、色を区別しづらい特性をもつ人や、加齢で色を見分けられない人もいます。そのような人を含め誰もが暮らしやすい環境を整えるための、色の知識や活用法を問うのが、UC級の試験です。
UC級の試験内容は、色のユニバーサルデザイン、色覚タイプによる色の見え方、高齢者の色の見え方などを理解し、配色の注意点を生活や仕事に生かせる力を問うものとなっています。教育、福祉、官公庁、デザイン系など、ユーザーや客の色覚の多様性に配慮すべき仕事をする人に、特に適した内容だといえるでしょう。
UC級の出題例としては、区別がしにくい色の組み合わせや、見分けやすく改善する方法について、選択肢から選ぶ問題などがあります。
UC級の試験方法・合格ライン・合格率
UC級の試験は、6月と11月の年に2回開催されます。試験方法はマークシート方式(一部記述式)で、試験時間は60分です。
合格ラインは200点満点中の160点前後(※)で、2023年度の合格率は83.6%でした。
(※合格ラインは、問題の難易度により変動があります。他級も同様です)
UC級の勉強方法・勉強期間
UC級の勉強法のひとつは、色彩検定協会監修の公式テキストと過去問題集を活用し、独学で勉強することです。
UC級に限らず、色彩検定の試験は公式テキストに沿ったものとなっています。テキストで繰り返し学んだうえで、過去問題集を使い演習を重ねましょう。勉強期間は、最低1カ月ほどは見ておいてください。なお、UC級に色彩検定の他級の知識は必要ありません。
独学のほかには、オンラインや通学で1~2カ月ほどの講座を受けるという方法もあります。
3級
3級は、色彩について初めて学ぶ人向けの級です。2級や1級の土台となる基礎知識を扱います。
3級の試験内容
色彩についての基本的な事柄が、3級の試験内容です。色彩の理論や法則に関する基礎知識が身についているかが問われます。
具体的な試験内容は、色が見える仕組み、色の分類、PCCSという色彩体系、色の心理効果、配色の基本的なやり方といった入門的知識のほか、ファッションやインテリアにおけるカラーコーディネートの基礎知識などです。
たとえば、実際の色の画像を見て同一トーンや対照トーンの配色を選ぶ問題や、印象を柔らかくするには色をどう調整すればよいかを答える問題などが出題されます。
日常生活に色の知識を生かしたい人や、色に関係がある仕事をしているもののきちんと学んだことがない人にとって、3級の内容はちょうどよいといえるでしょう。
3級の試験方法・合格ライン・合格率
3級の試験は、6月と11月の年に2回開催されます。試験方法はマークシート方式で、試験時間は60分です。
合格ラインは200点満点中の140点前後で、2023年度の合格率は74.1%でした。
3級の勉強方法・勉強期間
3級の勉強法として第一に挙げられるのは、公式テキストと過去問題集を使い独学で勉強することです。
ほかの級と同様、3級の試験でも公式テキストに沿った内容が出題されます。テキストを中心に、過去問題集で出題傾向を把握しながら演習に取り組みましょう。勉強期間の目安は、全くの初心者であれば最低でも2カ月、すでに色との関わりがある方の場合は1カ月ほどとなります。
一人で勉強するのが不安な方は、講座の受講を検討してみましょう。色彩検定協会で3級の内容に準じた通信講座が実施されていますし、色彩検定対策講座を開いているスクールはほかにもあります。講座の期間は2~3カ月ほどです。
なお、色彩検定は誰でも何級からでも受けられますが、3級の内容は2級・1級の土台となりますので、色を初めて学ぶならまずは3級の勉強から始めましょう。
2級
2級は、色に関する知識や技法を、実際に仕事で活用する人向けの級です。3級の知識をベースとしつつ、より発展的な内容となります。
2級の試験内容
2級の試験内容の特徴は、3級と比べてより実務に近くなるという点です。ファッション、インテリア、エクステリアでの活用に通じる、カラーコーディネートの基礎が問われます。
具体的には、色のユニバーサルデザイン、マンセル表色系、さまざまな配色技法などのほか、メディアデザインの色彩、ファッションの配色、住空間におけるインテリアの配色構成、景観色彩の基礎知識などが、2級の試験内容です。色に関わる仕事をする人にとって、ぜひマスターしておきたい内容だといえるでしょう。
出題例としては、色彩体系のPCCSを使った配色として適切な画像を選ぶ問題や、配色に関する説明文を穴埋めして回答する問題などが挙げられます。
2級の試験方法・合格ライン・合格率
2級の試験は、6月と11月の年に2回開催されます。試験方法はマークシート方式(一部記述式)、試験時間は70分です。
合格ラインは200点満点中の140点前後です。2023年度の合格率は72.2%でした。
2級の勉強方法・勉強期間
2級もほかの級と同様、公式テキストの内容から出題されるので、公式テキストと過去問題集を使うのが基本的な勉強法です。勉強期間の目安は、1~2カ月ほどを見ておきましょう。
3級に合格していなくても2級を受けることはできますが、2級では、3級の内容に加えて新たな知識や技法を扱います。ですので初心者の方は、3級の内容を勉強してから2級に入るとよいでしょう。その場合、トータルでの勉強期間の目安は1.5~3カ月ほどとなります。
2級の対策講座をオンラインで実施しているスクールもあります。講座の期間は2~3カ月ほどです。
1級
1級は、プロフェッショナル向けの級です。3級・2級レベルの知識と技能があることを前提に、色彩に関する専門的な事柄を扱います。
1級の試験内容
1級の試験では、ビジネスにおいて色彩設計に携われるレベルの知識と技能が問われます。色彩に関する課題について何をどのように改善すべきか、提案する力が求められるのです。
1級の試験内容には、色彩のビジネス活用、カラーマーケティング、ファッションビジネスにおけるカラーコーディネーターの役割といった実務的な内容のほか、日本と西洋の色彩の歴史、さまざまな色彩調和論なども含まれます。
1級の試験問題の例は、色彩調和論に関する説明文を穴埋めして回答する問題や、カラーマーケティングに関する専門知識を答える問題などです。1次試験合格者が受ける2次試験では、カラーカードを使った配色の実技テストがあります。
提案力のある色彩のプロフェッショナルを目指すならぜひクリアしたい内容が、1級の試験には詰まっています。
1級の試験方法・合格ライン・合格率
1級では、1次試験に合格すると2次試験に進みます。1次試験はマークシート方式で80分、2次試験は記述式(一部実技)で90分です。試験は年1回の開催で、1次試験が11月、2次試験は12月に行われます。
合格ラインは、1次も2次も、200点満点中の140点前後です。2023年度の合格率は41.4%でした。
1級の勉強方法・勉強期間
1級の勉強方法も、ほかの級と同様、公式テキストと過去問題集を活用するのが基本となります。1級はレベルが高いので、勉強期間は長めに見ておいてください。2~6カ月ほどが目安ですので、自分の現状に応じて入念に準備をしましょう。
ハイレベルな内容をひとりで勉強するのは難しいと感じる場合は、色彩関連のスクールが実施している対策講座を受講するという方法もあります。期間はスクールにより異なりますが、4~5カ月ほどです。
色彩検定を受けるメリットは?
色彩検定に合格すると具体的にどんなメリットがあるのか、仕事と仕事以外の両面で解説します。
色彩検定が生かせる仕事・業界
色彩検定は、さまざまな業界の多様な職種で生かすことが可能です。
たとえば、カラーコーディネーターや色彩講師など色の専門家として働けるほか、ファッション系、美容系、商品開発系、デザイン系、インテリア系、製菓系、フラワー系など、色との関連がある多くの仕事で色彩の知識や技能を活用できます。オフィスで働く人も、色の知識があれば、プレゼン資料などで効果的な色使いができるようになります。
また、色を見分けにくい高齢者向けの出版物をつくる仕事や、誰でも色を識別できる看板をつくる仕事などの場合、UC級に合格すれば、知識を業務に即生かすことができます。仕事の質も、社内外からの信用も上がるでしょう。
色彩検定はキャリアアップにつながる、というメリットも見逃せません。合格することで、デザインや宣伝といった色を扱う専門部署に異動できるケースがあるのです。もちろん履歴書にも書けますので、就職・転職活動でも役に立ちます。実際、住宅やインテリア関係の求人には、優遇資格として色彩検定を挙げているものもあります。色彩検定をキャリアアップにつなげたい場合は、実務的な知識を習得できる2級の合格を目指しましょう。
日常生活や家族のケアにも生かせる
色彩検定で得た色彩に関する知識は、日常生活にも生かせます。自分や家族が着る服のコーディネートや、自宅のインテリアの配色がうまくいくようになるので、身のまわりの色への満足度が上がり、生活が充実していくでしょう。センスがいいねと褒められることも増えるはずです。
また、色を区別しづらい特性をもつ人や高齢者と一緒に暮らしている場合、UC級の知識を身につけると、その人たちのケアに生かすことができます。たとえば、高齢者にとって見分けづらい黒と青の靴下にそれぞれ違う目印をつけてあげれば、左右で違う色の靴下を間違って履いてしまうことを防げます。そうしたサポートができるようになるのです。
色彩検定とカラーコーディネーターの違いとは?
色に関する資格には、色彩検定のほかにカラーコーディネーターもあります。両者の違いが気になりませんか?
カラーコーディネーター検定試験は、東京商工会議所が実施している、仕事に役立つ色彩の知識を問う試験です。色に関する幅広い知識を扱う点や受験資格がない点は、色彩検定もカラーコーディネーターも同じですが、級の数、試験方法、試験内容に違いがあります。
カラーコーディネーターの級の数は、スタンダードクラスとアドバンスクラスの2つです。試験方法は多肢選択式で、筆記や実技はありません。試験内容には、ファッションやインテリアだけでなく、工業分野も含まれます。
また、色彩検定と名前が似た色彩士検定というものもあります。こちらは、全国美術デザイン教育振興会が実施する、デザイナーやアーティストを目指す人向けの検定です。画材を使った演習・実技問題もあり、理論と実技の両方が重視されています。受験資格はありませんが、専門学校や大学などにおける色彩学習の履修レベルが定められているので、専門的に学んでいる人向けの検定だといえるでしょう。
まとめ|色彩検定に合格して仕事や生活に彩りを与えよう
色彩検定は誰でも受けることができ、公式テキストと過去問題集をしっかりとこなせば、色彩について初めて学ぶ人でも合格できる検定です。
色彩に関する知識を身につければ、仕事にも日常生活にもメリットがあります。ファッションが好きな人や、色に興味がある人、新しいことを学んでみたい人、生活を豊かにしたい人は、ぜひ色彩検定を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。