何か資格を取りたいけれど、働きながらでは難しそう——。そんなふうに感じている社会人の方は多いのではないでしょうか。
確かに、仕事や家庭と両立しながら勉強の時間を確保するのは、簡単ではありません。でも、資格・検定をくまなく調べてみると、受験資格がなく、短時間の学習や独学で取得可能な「挑戦しやすい資格」も、たくさんあることがわかります。
当記事では、「社会人が働きながら挑戦しやすい資格」を厳選して10種類紹介します。実用性が高く、キャリアアップや日常生活に役立つものばかりなので、仕事に役立つスキルを身に付けたい方、プライベートを充実させたい方は、ぜひご覧ください。
社会人が働きながら取りやすい資格とは?
社会人が挑戦しやすい資格には、「受験資格の制限がない・少ない」「勉強時間が少なくて済む」「独学しやすい」などの共通点があります。そして、こうした特徴に当てはまる資格を選べば、仕事と勉強を両立しながら、無理なくスキルアップを目指せるはずです。
ここからは、社会人でも取りやすい資格の特徴について詳しく解説します。
受験資格がない・少ない
資格のなかには、受験するために特定の学歴や実務経験、講座の受講が求められるものがあります。こうした条件があると、事前準備に手間や時間がかかるため、忙しい社会人にはハードルが高いですよね。
でも、心配する必要はありません。国家資格や民間資格のなかには、受験資格の制限がなく誰でも受けられる資格がちゃんとあります。特定の条件を満たすだけで受験できる資格も少なくないので、「受験資格を調べてみたら、すでに条件を満たしていた」というケースもあるでしょう。
受験のハードルが低ければ、すぐにでも学習に取りかかれるため、無理のない計画で合格を目指しやすくなります。興味のある資格が見つかったら、まずは受験資格の有無や条件の詳細を確認しましょう。
合格するために必要な勉強時間が比較的少ない
働きながら資格取得を目指す社会人にとって、勉強時間の確保は大きな課題です。仕事や家庭と両立しながら勉強をするのは、決して簡単とは言えません。でも、短期間で取得できる資格や、学習範囲がさほど広くない資格であればどうでしょう? 忙しい日々の合間でも、無理なく勉強に取り組めるはずです。
資格のなかには、通勤時間・スキマ時間を活用できる通信講座や、独学向けの教材が充実しているものもあります。公式サイトや資格専門サイトで、資格ごとの「学習時間の目安」を調べたうえで、効率的な学習計画を立てましょう。
ちなみに、試験日から逆算して学習可能な時間を割り出し、無理のない範囲で1日の学習時間を決めていくと、学習計画が立てやすいですよ。
資格スクールや予備校に通う必要がない
難易度の高い資格のなかには、専門的な指導がなければ合格が難しいものもあります。しかし、それだと時間や費用の負担が大きく、忙しい社会人向きとは言えません。
一方、独学で学習できる資格なら、時間や費用の負担を大きく抑えられます。平日、資格スクールや予備校などに通いにくい社会人にとって、「独学で合格を目指せるかどうか」は、資格選びの重要なポイント。条件に合った資格が見つかれば、モチベーションを維持しながら、自分のペースで資格勉強を進められるでしょう。
加えて、テキストや問題集が充実しているかどうかも重要です。学習の要点や出題傾向が押さえやすいテキスト・問題集がそろっていれば、学習効率がぐんと高まるはずです。
受験料が比較的安い
限られた予算でスキルアップを目指す社会人にとっては、受験料や教材費、講座費用などの総コストも、資格選びの大事な判断材料です。資格によっては受験料が1万円以上かかる場合もあり、不合格時になると再受験のときに同じ費用が発生してしまいます。
それを踏まえるなら、コストが比較的低い資格のほうが経済的な負担が少なく、「取りやすい資格(=チャレンジしやすい資格)」と言えるでしょう。
なお、資格によっては、受験料に加えて証明書の発行料やテキスト代が必要になるケースもあります。各資格の公式サイトには、そうした費用も明記されているので、気になる資格があれば必ずチェックしておきましょう。
【仕事に有用】取りやすい資格
取りやすい資格のなかには、ビジネスシーンで役立つものや、実務評価の向上につながるものも少なくありません。ここからは、就職や転職、キャリアアップに有用で、なおかつ取りやすい資格を8種類紹介します。
なお、これ以降で紹介する受験料は、基本的に税込の金額となります。
MOS
受験資格 | 特になし |
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学習時間の目安 | 上級レベル:約50~80時間 |
出題範囲 | 科目ごとに設定(下記の公式サイトの「試験概要」で確認できます) |
合格基準 | 非公開 |
受験料 | 一般レベル:10,780円(※) 上級レベル:12,980円 |
※2025年5月1日以降:12,980円
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、Microsoft Office製品に関する操作スキルや知識を客観的に評価・証明する資格です。Officeのバージョンごとに、各アプリケーション(Word・Excel・PowerPoint・Access・Outlook)の試験が用意されており、WordとExcelの試験には、一般レベルと上級レベルがあります。
普段からMicrosoft Office製品を使用している場合、勉強の目安は一般レベルが1か月程度、上級レベルなら1~2か月間程度と言われています。公式の過去問題集はないものの、試験対策教材が市販されているので、独学でも比較的取りやすい資格と言えるでしょう。
(出典:マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS))
日商簿記
受験資格 | 特になし |
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学習時間の目安 | 2級:約150~350時間 |
出題範囲 | 3級:商業簿記 2級:商業簿記・工業簿記(原価計算を含む) |
合格基準 | 各級とも、100点満点で70点以上 |
受験料 | 3級:3,300円 2級:5,500円 |
日商簿記とは、「企業の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を管理する技能」を証明する資格です。3級では基本的な商業簿記を、2級ではより高度な商業簿記・工業簿記を学びます。
3級・2級とも、計画的にコツコツと勉強する必要はありますが、公認のテキスト教材や問題集が充実しているので独学が可能です。また、受験料が比較的安いうえに、資格取得を昇進や昇格の要件にしている企業も多いことから、メリットの大きい資格と言えるでしょう。
(出典:日本商工会議所「商工会議所の検定試験」)
ファイナンシャルプランナー
受験資格 | 3級:FP業務に従事している、あるいは従事しようとしている人 2級:3級FP技能検定に合格している人、2年以上のFP業務の実務経験がある人など |
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学習時間の目安 | 2級:約150〜300時間 |
出題範囲 | 学科:ライフプランニングと資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継の6分野から出題 実技:金融財政事情研究会と日本FP協会で内容が異なる(公式サイトで確認できます) |
合格基準 | <金融財政事情研究会> 学科60点満点で36点以上、実技50点満点で30点以上 <日本FP協会> 学科60点満点で36点以上、実技100点満点で60点以上 |
受検料(学科試験と実技試験) | 3級:8,000円 2級:11,700円 |
ファイナンシャルプランナー(FP)は、一般社団法人金融財政事情研究会と日本FP協会が実施する国家資格で、不動産や住宅ローン、保険、教育資金、年金など、家計に関わる金融について幅広くサポートする専門家です。FP技能検定試験には1級、2級、3級があり、各級とも受験資格が設けられています。ただし、性別や年齢などに制限があるわけではないため、3級は実質的に誰でも受験できると考えてよいでしょう。
学科試験と実技試験がありますが、3級の場合は多肢選択式で合格率も80%を超えていることから、難易度は比較的低い傾向にあると言えます。なお、FP試験に関する教材や問題集はさまざまな種類が販売されているので、自分に合うものを選んで勉強できます。
(出典:金融財政事情研究会 / 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)
秘書検定
受験資格 | 特になし |
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学習時間の目安 | 2級:約20~70時間 |
出題範囲 | <筆記> 理論:必要とされる資質、職務知識、一般知識 実技:マナー・接遇、技能 |
合格基準 | 筆記試験は、「理論」と「実技」に領域区分されており、それぞれの得点が60%以上で合格 |
受験料 | 3級:3,800円 2級:5,200円 |
秘書検定とは、社会人としての基本的なマナーが身に付いていることを証明する資格で、1級・準1級・2級・3級があります。秘書検定では「感じのよさ」の表し方に重点が置かれており、資格取得を通じて相手に感じがよいという印象を与える立ち居振る舞い、言葉遣い、話し方などが習得できます。
あわせて、会議文書の作成や電話応対なども学べるため、秘書検定で学んだ知識やスキルは、秘書職はもちろん事務職、営業職などの業務にも役立でしょう。
試験には筆記と面接がありますが、社会人に必要なビジネスマナーを問う内容がほとんどなので、一般常識が身に付いていれば合格は難しくないと言えます。
(出典:公益財団法人実務技能検定協会「秘書検定」)
色彩検定
受験資格 | 特になし |
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学習時間の目安 | 2級:約30~60時間 |
出題範囲 | 3級:光と色、色の表示、色彩心理、色彩調和、配色イメージ、ファッション、インテリアなど 2級:色のUD、光と色、色の表示、色彩心理、配色イメージ、ビジュアル、ファッション、インテリア、景観色彩など |
合格基準 | 2級、3級とも200点満点の140点前後 |
受検料 | 3級:7,000円 2級:10,000円 |
色彩検定とは、色に関する幅広い知識や技能を問う検定試験で、初めて色について学ぶ人向けの3級から、プロフェッショナル向けの1級までの等級があります。
3級を取得することで、色のはたらきや心理的効果、配色の技法など、基本的な色の理論・法則が身に付くため、「私には色のセンスがないかも」と悩んでいた人も、より自由に色を使いこなせるようになるでしょう。
他の資格と同様に受験資格はなく、公式テキストや過去問題集を使ってコツコツと勉強すれば、独学で資格合格を目指すことが可能です。色の知識は、提案資料やプレゼン資料をつくるときにも役立つため、ファッション業界や美容業界、出版業界はもちろん、一般企業でも活用しやすい資格と言えます。
(出典:公益社団法人色彩検定協会「色彩検定」)
ITパスポート
受験資格 | 特になし |
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出題範囲 | ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の3分野 |
合格基準 | 総合評価点:600点以上(1,000点満点) 分野別評価点:各300点以上(1,000点満点) |
受験料 | 7,500円 |
ITパスポートは、ITに関する基礎的知識を証明する国家試験です。資格取得を通じて情報システム、ネットワーク、データベース、情報セキュリティなどの知識が習得できるため、近年は社員に取得を推奨したり、社内研修に取り入れたりする企業も増えています。
学習時間の目安は、IT業界やWeb業界の仕事に携わっている場合で100時間程度、ITに関する知識がまったくない場合は180時間程度と言われています。加えて、さまざまな参考書や過去問題集が出版されているので、「独学でも取得しやすい資格」と言えるでしょう。
(出典:独立行政法人情報処理推進機構「ITパスポート試験」)
医療事務(メディカル クラーク®)
受験資格 | 特になし |
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出題範囲 | 学科:医療保険制度、医事法規一般、医療保障制度、公費負担医療制度、患者対応など 実技:コミュニケーション(患者接遇)、診療報酬請求業務(医科・歯科) |
合格基準 | 学科試験および実技試験それぞれの得点率が70%以上 |
受験料 | 8,800円 |
メディカル クラーク®は、医療事務業務に求められる知識・技術が備わっていることを証明する資格です。医療事務関連の資格のなかでも最大規模の資格であり、長年の実績もあるため、取得すれば就職・転職活動のアピールポイントになるでしょう。
試験は医療事務の基礎知識や、診療報酬請求事務、レセプト点検など、実際の業務に直結する内容となっています。ただし、学科・実技とも参考資料を持ち込めるため、きちんと学習すれば合格する可能性は十分にあるでしょう。独学で試験に臨む際は、事前に市販のテキストを読み込んだり、問題集をくりかえし解いたりして、基礎知識を習得しておくことが大事です。
(出典:日本医療教育財団「医療事務技能審査試験」)
危険物取扱者
受験資格 | 乙種・丙種:特になし |
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出題範囲 | 乙種:危険物に関する法令、基礎的な物理学および化学、危険物の性質と火災予防・消火方法 丙種:危険物に関する法令、燃焼と消火の基礎知識、危険物の性質と火災予防・消火方法 |
合格基準 | 各科目で60%以上正解 |
受験料 | 乙種:5,300円 丙種:4,200円(非課税) |
※消費税は非課税
危険物取扱者は、特定の危険物を取り扱う際に必要な国家資格です。危険物取扱者には甲種、乙種、丙種の3種類があり、乙種は指定の危険物(酸化性固体、可燃性固体、引火性液体など)の取り扱いや定期点検、保安の監督、丙種は引火性液体の取り扱いと定期点検ができます。
また、化学工場やガソリンスタンド、石油貯蔵タンク、タンクローリーなど、一定数量以上の危険物を取り扱う場所には、危険物取扱者の資格取得者を配置しなければなりません。
危険物取扱者は、危険物の取り扱いに関する総合的な知識を身に付けているため、就職・転職する際に大きな武器になります。石油業界や製造業界、医療業界などで活躍したい方は、取得を検討するとよいでしょう。
(出典:消防試験研究センター「危険物取扱者試験」)
【生活に有用】取りやすい資格
毎日の家事や健康維持に役立つ資格は、実用性が高く幅広い層に人気です。ここでは、生活に有用で取りやすい資格を2種類紹介します。
整理収納アドバイザー
受験資格 | 3級:日本語が理解できる人 2級:高校生以上 |
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受講時間 | 3級:3時間 2級:1日(7時間) |
合格基準 | 2級、3級ともに講座を受講 |
受講料 | 3級:9,900円 2級:24,700円 |
整理収納アドバイザーは、「散らかりにくく片付けやすい空間」をつくる整理収納のプロフェッショナルです。資格取得を通じて、整理収納の基本的な考え方から実践的なコツまで、整理収納のさまざまなノウハウが学べるため、自宅の空間づくりはもちろん、オフィス(デスクまわり)の環境改善にも役立つでしょう。
整理収納アドバイザーには1級、準1級、2級、3級がありますが、3級と2級は、講座を受講するだけで資格取得が可能です。受講時間も3級が3時間、2級が1日と短いため、仕事でまとまった時間を取るのが難しい人でも、取りやすい資格と言えるでしょう。
なお、整理収納アドバイザー1級資格を取得すれば、プロのアドバイザーとして活躍できるようになります。
(出典:特定非営利活動法人ハウスキーピング協会)
食生活アドバイザー®
受験資格 | 特になし |
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学習時間の目安 | 2級:約120時間~150時間 |
出題範囲 | 栄養と健康、食文化と食習慣、食品学、衛生管理、食マーケット、社会生活 |
合格基準 | 3級:100点満点中60点以上 2級:123点満点中74点以上 |
受験料 | 3級:5,500円 2級:8,000円 3級・2級併願:13,500円 |
食生活アドバイザー®とは、食生活全体をさまざまな視点からとらえ、正しい知識のもとに健康的な生活を送るための助言・指導を行うスペシャリストです。
食生活アドバイザー®には2級と3級があり、学習を通じて食文化や食習慣、食品学、衛生管理など、食生活に関する知識を幅広く習得できます。
公式テキストや問題集が販売されているため、独学で資格取得を目指すことが可能ですが、資格取得にあたっては食にまつわる社会問題やニュースに対する理解力も問われます。そのため、普段から食生活に対する関心を深めておくとよいでしょう。
(出典:一般財団法人FLAネットワーク®協会 食生活アドバイザー®)
まとめ
「受験資格の制限がない」「勉強時間が少なくて済む」「独学でも取得可能」「受験料が比較的安い」などの条件を満たす資格は、社会人でも比較的取りやすいのでおすすめです。特にMOSや日商簿記、秘書検定などは、就職・転職活動やビジネスシーンでの評価アップにもつながるでしょう。
取りやすい資格のなかには、色彩検定や整理収納アドバイザーのように日常生活に生かせる資格もあります。自分の興味やライフスタイルに合った資格を選べば、無理なく勉強を続けられるので、効率のよいスケジュールを立てて合格を目指しましょう。
※当記事は2025年4月時点の情報をもとに作成しています
※掲載内容について情報が更新されている場合がありますので、必ず公式サイトにて最新情報を確認してください