日本漢字能力検定(以下、漢検)に合格するためには、ポイントを押さえて勉強を進めることが大事です。とはいえ、初めての挑戦だと、何から手をつけていいのか悩んでしまうことも事実。みなさんのなかにも、「漢検に合格するための効率的な勉強方法を知りたい!」とお考えの方がいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、漢検合格に向けた勉強方法や学習計画の立て方、問題集の選び方などを詳しく紹介します。級別におすすめの勉強方法も解説しますので、それぞれのレベルに適したやり方で効率的に学習を進め、漢検合格を目指しましょう。
漢検とは
漢検は、漢字の読み書きに関する知識や、文章のなかで漢字を適切に使いこなす能力を測る検定試験です。日本漢字能力検定協会が主催しており、試験では漢字の読み、書き取り、熟語の意味理解などが出題されます。これまで、5,500万人が漢検に挑戦してきました(1992年の開始時からの累計)。
漢検に合格すると、級のレベルに応じた漢字の読み書き能力や、言葉の理解力、文章・会話に必要な語彙力があることを証明できます。そのため漢検合格者となれば、入試や就職活動の際に自らの能力をアピールしやすくなるでしょう。また日常生活においても、思考や表現が豊かになるというメリットが得られます。
近年では、漢検を利用する教育機関が増え、学校が授業の一環として漢検を実施する場合もあります。また、社会人がスキルアップの目的で受検するケースも少なくありません。
なお、漢検は日本国内だけでなくアメリカやフランス、ドイツ、韓国などでも受検できます。
漢検各級におけるレベルの目安
漢検には1級から10級までの級があり、受検者は自分の実力やニーズに合った級を選ぶことが可能です。級が高くなるにつれ、出題範囲が広がり難易度も上がります。
各級のレベルの目安を紹介しますので、自分に合う級を探してみてください。
10級から5級まで
10級から5級までの対象漢字は、小学生レベルに相当します。このうち10級は小学1年生修了程度のレベルで、審査基準は「小学校第1学年の学習漢字を理解し、文や文章のなかで使えること」です。10級の合格率は毎回90%を超えており、必要な学習をしたうえで落ち着いて試験に臨めば、合格の可能性は高いでしょう。
4級から2級まで
4級は中学校在学程度、3級は中学校卒業程度、準2級は高校在学程度の漢字が対象です。4級から準2級までは、しっかりと計画を立てて学習すれば合格できるレベルだと言えます。
2級では難易度が上がり、高校卒業・大学・一般程度の知識が求められます。すべての常用漢字(2,136字)が対象となるので、十分な学習時間と効率的な対策が必要な級だと言えるでしょう。
準1級と1級
準1級と1級はさらに難易度が高く、大学生・社会人のレベルの漢字が出題されます。特に1級では、常用漢字を含めて約6,000字の漢字知識が求められ、合格率は5〜10%程度と低めです。公式テキスト、問題集だけでなく、四字熟語や故事ことわざの辞典なども活用した、ハイレベルな学習が必要な級だと言えます。
各級のレベル一覧
級 | レベル | 対象漢字数 | 主な出題内容 |
---|---|---|---|
1級 | 大学・一般程度 | 約6,000字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、故事・ことわざ、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語 |
準1級 | 大学・一般程度 | 約3,000字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、故事・ことわざ、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語 |
2級 | 高校卒業・大学・一般程度 | 2,136字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語、熟語の構成 |
準2級 | 高校在学程度 | 1,951字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語、熟語の構成 |
3級 | 中学校卒業程度 | 1,623字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語、熟語の構成 |
4級 | 中学校在学程度 | 1,339字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語、熟語の構成 |
5級 | 小学校6年生修了程度 | 1,026字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、筆順・画数、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、四字熟語、熟語の構成 |
6級 | 小学校5年生修了程度 | 835字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、筆順・画数、送り仮名、対義語・類義語、同音・同訓異字、誤字訂正、三字熟語、熟語の構成 |
7級 | 小学校4年生修了程度 | 642字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、筆順・画数、送り仮名、対義語、同音異字、三字熟語 |
8級 | 小学校3年生修了程度 | 440字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、部首・部首名、筆順・画数、送り仮名、対義語、同じ漢字の読み |
9級 | 小学校2年生修了程度 | 240字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、筆順・画数 |
10級 | 小学校1年生修了程度 | 80字 | 漢字の読み、漢字の書き取り、筆順・画数 |
漢検の効率的な勉強方法
ここからは、漢検に合格するための効率的な勉強方法を解説します。
まずは学習計画を立てる
学習を始める前に、まずは計画を立てましょう。
最初に、テキストや問題集などを使い、級ごとに必要とされる知識量を把握します。次に、試験日から逆算して、自分がどれぐらいの日数を勉強に費やせるのかを数えましょう。あわせて、1日につき勉強時間をどれぐらい確保できるかも見積もります。
必要な知識量と、試験日までの学習可能日数・時間が分かったら、1日に勉強すべき量が見えてきます。それに基づいて、日付ごとに学習予定時間と内容を設定していきましょう。
ここで大切なのは、無理のない範囲で学習時間を設定するということです。必ずしも予定通りに勉強できるとは限らないため、学習計画には余裕をもたせましょう。少ししか勉強できない日があった場合は、別の日にリカバリーするといったように、柔軟性が利き、かつ学習を継続しやすいスケジュールを意識してみてください。
計画には、復習時間も忘れずに組み込んでください。定期的な復習を行うことで、記憶の定着が進むからです。週に一度、学習が計画通りに進んでいるかどうかをチェックする日を設定するのもよいでしょう。
計画を立てるなかで、「どのように勉強を進めていいかわからない」と感じた場合は、通信講座を活用してみるのも1つの選択肢です。通信講座では、学習計画があらかじめ用意されているので、自分で計画を立てる手間を省けます。
問題集を使う
漢検の勉強をする際は、問題集を活用しましょう。問題集は、出題パターンや重要な頻出漢字を網羅しているので、効率よく学習を進めるのに適しています。
問題集を使うときは、まず各章の内容を確認し、解説をしっかり読むことから始めましょう。解説を読み終えたら、一度問題を解いてみて、自分の理解度を確認します。問題を解くときは、かかった時間も確認しておいてください。
問題集のなかにある模擬試験問題を使って、本番に近い環境で解く練習するのも効果的です。制限時間内に解答することで、試験当日の時間配分の感覚をつかむことができるでしょう。
加えて、複数の問題集を併用するのもおすすめです。より多くの問題を解くことで、知識が定着しやすくなることが期待できます。
過去問を解く
漢検の勉強では、過去問の活用もおすすめです。
問題集で勉強しつつ定期的に過去問にも取り組めば、自分の実力を客観的に評価できるほか、試験の形式に慣れたり出題傾向を把握したりすることにもつながります。受検前の総仕上げとして、過去問を活用するのもよいでしょう。
過去問題集には、最近実施された実際の検定問題が複数回分収録されているので、本番を意識した学習を何回も行うことができます。別の過去問にチャレンジしながら、自分の実力が上がっているかどうかを確かめることもできるでしょう。
苦手分野を重点的に対策する
問題集や過去問で勉強をするなかで自分の苦手分野が明確になったら、その部分を重点的に学習する必要があります。
問題集などで間違えた問題は、繰り返し解いて理解を深め、本番では確実に正解できるようにしましょう。一応正答できたものの理解が曖昧だった問題や、制限時間内に解き終えることができなかった問題についても同様です。
漢字の読み、書き取り、対義語・類義語、送りがな、四字熟語など、分野別に学習できる問題集などを活用するのもよいでしょう。
あわせて、苦手克服の状況を定期的にチェックすることも大事です。克服できていない部分があれば、追加対策を立てるようにしましょう。苦手分野から重点的に対策していくと、得点が伸びやすくなるので、ぜひ実践してみてください。
苦手分野に集中して取り組み、不安要素を解消すれば、自信を持って試験に挑めるはずです。
漢検各級のおすすめ勉強法
続いて、級別に効果的な勉強方法を紹介します。
漢検4級・3級の勉強方法
漢検4級では中学校在学程度、漢検3級では中学校卒業程度の漢字が出題されます。教科書に出てくる漢字をしっかりと復習し、知らない漢字がないようにしましょう。わからない漢字があれば、そのつど参考書や辞書で確認することが大事です。
また、このレベルでは書き取りの得点配分が高いので、実際にノートに書いて正しく記憶するようにしてください。
四字熟語などは声に出してリズムで覚えると、記憶に定着しやすくなります。新聞や本、ウェブサイトなど、日常生活のなかの漢字に目を向けて、知識を深めるのもよいでしょう。
漢検準2級の勉強方法
漢検準2級では、高校在学程度の漢字力が求められます。3級と比べて出題対象の漢字数が300字以上増え、高度な熟語や難読漢字も出題されるため、幅広い知識が必要です。
書き取りや四字熟語の問題も含め全体的に難易度が高くなるので、意味を理解したうえで、繰り返し書いて覚えましょう。難しい漢字は、語源を調べたり友人や家族に話したりすることで、記憶に残りやすくなります。
出題分野が多岐にわたるため、配点が高い分野や自分の得意・不得意を見極めたうえで、効率よく勉強することも大事です。網羅的内容の問題集と分野別の問題集を併用すると、苦手な分野を克服しながら得点アップが目指せるでしょう。
漢検2級の勉強方法
漢検2級のレベルは高校卒業・大学・一般程度とされており、日常生活やビジネスシーンで使われるような常用漢字を、すべて読み書きできる知識が求められます。対象の漢字は、準2級と比べて200字弱しか増えませんが、合格には80%以上(200点満点中160点以上)正解する必要があります。
苦手分野があると全体の正答率が下がりかねないため、漢検2級では各分野を満遍なく学習することが大事です。まずは、高校の教科書に出てくる漢字をしっかりと復習し、基礎を固めることからスタートしましょう。そのうえで繰り返し問題集を解き、苦手克服に努めてください。
関連性のある漢字をグループ(例えば、部首が同じ漢字や同じ意味を持つ漢字)として覚えたり、漢字の成り立ちや由来を調べたりすると、より理解が深まりやすくなります。
また、緊張や焦りからくるミスをなくすため、試験本番に近い模擬テストに取り組んで、試験形式に慣れておくのもおすすめです。
漢検準1級・1級の勉強方法
漢検準1級および1級では、大学生や専門家レベルの漢字知識が問われます。一段と難易度が高くなり、合格率が10%に届かない回もあるほどです。他の級よりもさらに網羅的、効率的な学習が必要になるでしょう。
準1級、1級とも専門的な用語や難読漢字、古典文学に使われる漢字など、出題が多岐にわたります。合格するためには、専門書や四字熟語辞典、故事ことわざ辞典などを活用しながら、意味や用例、成り立ちを詳しく学ぶことが大事です。なお、漢検の1級と準1級では対象とされる漢字の数に差があり、準1級の出題範囲が約3,000字なのに対して、1級は約6,000字です。
過去問を活用する際は、ただ解答するだけでなく、なぜその答えになるのかを理解し、より知識を深めましょう。出題傾向を分析し、頻出漢字や熟語のリストを作成するのもおすすめです。非常に多くの漢字を覚える必要があるため、書き取りや復習を徹底し、着実に知識量を増やしていってください。
漢検の問題集の選び方
漢検に合格するためには、適切な問題集を選ぶことも重要です。おすすめの選び方を紹介しますので、自分のレベルやニーズに合った問題集を選び、効率的に学習を進めましょう。
日本漢字能力検定協会の公式本から選ぶ
初めて漢検を受検する方が安心して学習を進めるには、日本漢字能力検定協会が発行している公式本から選ぶのがおすすめです。
公式本は級ごとの審査基準を反映してつくられているため、活用すれば効率よく勉強することができるでしょう。過去の出題傾向を踏まえた問題も多く掲載されているので、実際の試験の予行演習にもぴったりです。
また、対象漢字を1字ずつ学習できるものから、本番を意識した学習ができるものまで複数のタイプがあるのも公式本の特徴です。
自分の勉強方法に合わせて選ぶ
漢検に合格するには、自分のレベルや勉強方法に合った問題集を選ぶことも大事です。例えば、「短期間で集中して学習したい」という方なら、速習型の問題集を選ぶとよいでしょう。重要なポイントに絞って短期間で効率よく学べる構成になっており、試験日が迫っているような場面でも有効です。
一方、「じっくりと時間をかけて学びたい」という方は、基礎からしっかり学べる問題集を選んでみましょう。漢字の成り立ちや意味が詳しく説明されているため、理解を深めながら進めることができます。
「スキマ時間を有効に使いたい」と考える方には、一日10分程度の学習を想定した問題集や、コンパクトで持ち運びやすい問題集が適しています。また「暗記が苦手で……」と悩んでいる方は、視覚的に覚えやすいイラストや図解が豊富な問題集を選ぶのがおすすめです。
また、漢字トレーニング用のアプリも活用すれば、通勤・通学時間に手軽に勉強できます。自分のスタイルに合った問題集を選んで、学習効率の向上とモチベーションの維持を目指しましょう。
漢検CBTへの対策方法
漢検はパソコンを使って受検することもでき、この受検方法を漢検CBT受検と呼びます(CBTとはComputer Based Testingの略)。漢検CBTは2~7級が対象で、システムを導入している検定会場で受検できます。
以下では、漢検CBTのメリットや勉強方法を解説します。
漢検CBTのメリット
漢検CBTの最大のメリットは、受検日程の柔軟性です。従来型の紙の試験を受けられるチャンスは年に3回ですが、漢検CBTでは検定日程が豊富に用意されており、受検者は自分の都合に合わせて試験日や時間帯を選択できます。
時間に制約のある人にとっては、漢検CBTのほうが受検しやすいといえるでしょう。
漢検CBTの勉強方法
漢検CBTにおける各級のレベルは、紙の試験と同程度です。パソコンを使用する特性上、出題形式や解答方法が異なる問題もあるものの、漢検CBTの勉強方法は、基本的には紙の試験と同じで問題ないでしょう。
なおパソコン操作に不慣れな人は、試験勉強をするほかに、文字入力やマウス操作といった基本的なパソコン操作も練習しておくことをおすすめします。あわせて、あらかじめ漢検公式サイトから説明動画にアクセスし、漢検CBTにおける操作方法を把握しておきましょう。当日、試験問題を解くことに集中できるよう、パソコン操作の不安を解消しておくことが大切です。
効率的な学習で漢検合格を目指そう!
本記事では、漢検合格に向けた効率的な学習方法を紹介しました。
漢検の勉強をするにあたっては、まず学習計画を立てたうえで、問題集を上手に活用しながら、苦手分野を克服していくことが大切です。過去問や模擬試験を利用し、時間をきっちりと計って本番を意識した学習をすることも効果的だと言えます。
自分の受検級に合った方法で効率よく学習を進め、漢検合格を目指しましょう!
参考:漢検(日本漢字能力検定)