受験資格なしで取れる国家資格を難易度別に解説!

現在、日本には290種類以上の国家資格があり、そのうちの多くに「受験資格」が定められています。そのため、国家資格を取得したいと思っても、受験資格がハードルになることは少なくありません。

しかし、なかには受験資格がない国家資格も存在します。勉強して知識や技術を身につける必要はありますが、誰でも国家資格取得を目指せるのです。難しいものばかりでなく、初心者でも挑戦しやすいものもあります。

この記事では、受験資格のない国家資格を難易度別に紹介します。それぞれの資格を取るメリットや勉強方法もお伝えするので、ぜひあなたにぴったりの資格を見つけてキャリアアップを目指してください。

受験資格なしの国家資格5選

国家資格のなかには、年齢や学歴、実務経験などの制限がなく、原則的に誰でも受験できるものがあります。短期間の勉強でも比較的簡単に取得できるものから、しっかりとした準備が必要なものまで、難易度はさまざまです。

以下では、受験資格のない国家資格のなかから、難易度別におすすめの資格を紹介しましょう。

【難易度の目安】
難易度★☆☆……比較的簡単に取れる国家資格。初めて資格取得を目指す方や仕事で忙しい方でも、気軽に挑戦しやすいでしょう。
難易度★★☆……やや難しい国家資格。より専門的な知識が求められたり、試験範囲が広かったりするので、時間をかけて丁寧に学習する必要があります。
難易度★★★……難しい国家資格。合格のハードルは決して低くないため、適切な勉強プランを立て、重要箇所・苦手箇所を繰り返し学習することが必要です。

難易度★☆☆ ファイナンシャル・プランニング技能士3級(FP技能検定)

ファイナンシャル・プランニング技能士は、貯蓄・投資、資産管理などに関する相談や提案を行う専門家です。

3級から1級までの等級があり、そのうち3級FP技能検定は、FP業務に「従事している」か「従事しようとしている」人であれば受験できます。つまり、FP3級の受験資格は実質ないと言えるのです。

3級は基礎的な学習をしておけば合格しやすく、独学で合格を目指す受験者も多くいます。合格率は70〜90%弱です。受験日が年に数回ある点でも、比較的挑戦しやすいでしょう。

受験を通じ、ライフプランニングや保険、年金、資産運用といった幅広い知識が身につきます。そのため、資格を取得すれば、金融業界への転職や独立開業など、キャリアの幅が広がるでしょう。また、貯蓄や投資の知識は、日常生活においても十分役立ちます。

なお、FP技能検定の指定試験機関は、日本FP協会と、一般社団法人 金融財政事情研究会の2つです。

▼試験の詳細はこちら
日本FP協会「FP技能検定とは」
一般社団法人 金融財政事情研究会「ファイナンシャル・プランニング技能検定」

難易度★☆☆ ITパスポート

ITパスポートは、情報処理の基礎知識が身についていることを証明する国家資格です。この資格は、情報処理技術者試験制度の入門編に位置づけられています。

試験では、IT管理、IT技術、経営などの基礎的な知識を問う内容が出題されます。過去問や参考書を用いて計画的に学習すれば、比較的短期間で合格を目指すことが可能です。

ITだけでなく経営に関する知識も身につくので、ITパスポートはエンジニア職のほか、一般事務職や営業職で働く人からも人気の資格です。ITに関する幅広い知識を得て将来に備えたい社会人にとって、キャリアアップの一助になる資格だと言えるでしょう。

▼試験の詳細はこちら
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「ITパスポート試験」

難易度★★☆ 宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業者(いわゆる不動産会社)が宅地や建物の売買、賃貸物件のあっせん取引などをする際に必要な国家資格です。不動産取引における「契約締結前に行う重要事項の説明」や、「重要事項説明書面への記名」「契約内容を記した書面への記名」は、宅建士の資格保有者にしかできません。そのため、宅建士は非常に重要な役割を担う資格だと言えます。

試験では、民法や宅建業法、税務など幅広い知識を問われるため、しっかりとした学習計画を立て、参考書や過去問でポイントをおさえる必要があるでしょう。

宅建士は、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、不動産鑑定士といった、不動産関連の別資格へのステップアップにもつながる資格です。不動産業界でキャリアを築いていこうと考える方は、取得を検討してみるとよいでしょう。また、宅建士の資格は住宅メーカーや金融機関でも生かせるため、他業界への転職を目指す際にも有利に働くことが期待できます。

▼試験の詳細はこちら
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「宅建試験」

難易度★★★ 行政書士

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や相談業務、提出の代理業務などを行う資格です。店舗や会社を開業する際の許認可申請やビジネスコンサルティングのほか、日々の暮らしに役立つ相談(遺言・相続、成年後見など)も業務に含まれ、「行政手続を専門とする法律家」として幅広く活動します。

試験は、基礎法学や憲法、民法、商法、行政の法令等5科目と、行政書士の業務に関する基礎知識1科目から構成されています。法律に関する正確な知識が求められるため、通信講座や専門学校を活用して学習を進めるのがおすすめです。

合格するには、試験全体で180点以上(満点の60%以上)であることに加え、法令等科目122点以上(満点の50%以上)、基礎知識科目24点以上(満点の40%以上)という条件をクリアする必要があります。

合格率は例年10〜13%程度で、ハードルは決して低くありません。しかし、合格すれば企業の法務担当として活躍できるほか、独立開業も可能です。また、弁護士が1年間の司法修習、司法書士が3つの新人研修があるのに対し、行政書士は試験合格後に行政書士登録をする際、研修などはありません。この点も、行政書士の魅力と言えるでしょう。

▼試験の詳細はこちら
一般財団法人行政書士試験研究センター「最新情報」

難易度★★★ 中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業からの依頼に応じて、経営面の問題分析や経営改善の提案、成長支援などを行う資格です。働き方は、企業に所属する「企業内診断士」と、独立して複数企業とコンサルタント契約を結ぶ「独立診断士」に分かれますが、有資格者の多くは企業内診断士として活躍しています。

試験は、第1次試験と第2次試験(筆記・口述)で構成されています。第1次試験は経済学・経済政策、企業経営理論、経営法務などの7科目で、第2次試験は中小企業の事例に関する4科目です。合格後は、3年以内に15日以上、診断実務に従事するか実務補習を受講しなければなりません。

例年の合格率は、第1次試験が18~43%、第2次試験が18~24%で、行政書士と同様ハードルが高めです。合格を目指す方は、通信講座や専門学校を活用しながら、計画的に学習を進めていくことをおすすめします。

中小企業診断士は、資格取得によって経営に関する幅広い知見が身につく資格です。キャリアアップのチャンスが広がるほか、転職にも有利に働くので、取得するメリットは大きいと言えるでしょう。

▼試験の詳細はこちら
一般社団法人 中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験」

受験資格なしの国家資格を取得するメリット

受験資格がない国家資格の魅力は、誰でもチャレンジできるということだけではありません。受験資格がなくても、国家資格の信頼性の高さに変わりはなく、資格を取得すればその後のキャリアアップが見込めるのです。

ここでは、受験資格なしの国家資格を取得することのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

メリット① キャリアの選択肢が広がる

受験資格なしの国家資格を取得して、専門性の高い知識・スキルを身につければ、就ける仕事やこなせる業務の種類が増えます。資格取得前と比べて、キャリアの選択肢は大きく広がるでしょう。

また、受験資格なしの国家資格を取得することは、専門知識を生かした独立開業の足がかりにもなりえます。例えば、ファイナンシャル・プランニング技能士3級の資格を取得後、経験を積みながら2級、1級とステップアップしていけば、FPとして独立開業できる可能性が高まるでしょう。

メリット② 収入アップにつながる可能性がある

受験資格なしの国家資格を取得すると、収入アップへの期待が高まります。例えば、宅地建物取引士や行政書士を取れば、有資格者でないと取り扱えない業務にも携われるようになるため、給与アップにつながる可能性があるのです。

また、資格手当が支給される企業に勤めている場合は、資格取得によって給与が上がります。ほかには、資格を取得したことが評価されて、プロジェクト管理者やチームリーダーといったポジションに昇格し、結果的に給与が上がることも考えられるでしょう。

メリット③ 転職活動でのアピールポイントになる

受験資格なしの国家資格は、転職市場においても大きな武器となります。資格は、特定の分野における知識やスキルを客観的に証明する手段だからです。資格を取得すれば、確かな知識とスキルがある即戦力人材として企業から期待され、信頼されやすくなります。

例えば、宅地建物取引士の資格を持っていれば不動産業界で、電気工事士を取得すれば建設業界で、転職が有利になるでしょう。なお、難易度が高い資格ほど、転職市場での価値も高いものです。取得すれば、企業に対してより効果的なアピールができるでしょう。

また、資格取得によって自分に自信が持てることも、転職活動にいい影響をもたらすと言えます。コツコツと学習を重ねて資格を取得したという成功体験は、自己肯定感につながるはずです。応募先の企業に対し、より積極的に自分をアピールできるようになるでしょう。

国家資格の種類と特徴

受験資格なしの国家資格に興味があるなら、国家資格の種類についても知っておきましょう。国家資格は、法律に基づく規制によって、「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」の3つに分類されます。

業務独占資格

業務独占資格とは、有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行える資格です。例としては弁護士、公認会計士、司法書士、行政書士などがあります。

名称独占資格

名称独占資格とは、有資格者以外はその名称を名乗ることが認められていない資格です。看護師、栄養士、保育士、中小企業診断士、マンション管理士などが該当します。

設置義務資格

設置義務資格とは、特定の事業を行う際に、法律で設置が義務づけられている資格です。危険物取扱者、食品衛生管理者、宅地建物取引士(宅建士)などが代表例と言えます。文部科学省によれば、設置義務資格は公共の安全や衛生を維持するために不可欠とされており、有資格者の設置義務がある企業や事業場では、その資格を持つ人がいないと業務を行えません。

国家資格における受験資格の例

この記事では、受験資格のない国家資格に注目していますが、受験資格が定められた国家資格も多くあります。ここでは、受験資格の一例とそれぞれに該当する国家資格を紹介しましょう。

学歴

受験資格を得るには一定の学歴が必要となる国家資格があります。高卒以上、短大卒以上、4年制大学卒以上など、必要とされる学歴は資格によってさまざまです。また、特定の学部や養成課程の修了を、受験資格として定めるものもあります。

例えば、医師国家試験の受験資格を得るには、大学の医学部を卒業する(卒業見込みを含む)ことが必要です。

年齢

受験資格として年齢が定められているケースもあります。

例えば、鉄道運転士になるための国家資格である動力車操縦者の受験資格があるのは、18歳以上の人です。

実務経験

受験資格として、一定期間所定の実務に従事していることが必要な国家資格もあります。

例えば、介護福祉士の受験資格を得る方法のひとつに、介護等の業務に3年以上従事したうえで、実務者研修を修了するというやり方があります。

なお、養成施設や福祉系高校から介護福祉士を受験する場合、実務経験は求められません。このように、学歴によって実務経験の必要性が異なる場合もあるので、よく確認することをおすすめします。

まとめ:受験資格なしの国家資格でキャリアアップを目指そう

この記事では、受験資格なしで取得できる国家資格について詳しく解説しました。国家資格と聞いて、「受験資格が厳しそう」「学校などに通わないと取れないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実は年齢や学歴、実務経験などの制限がない国家資格もたくさんあります。難関資格ばかりでなく、比較的簡単なものもありますよ。

国家資格を取得すれば、キャリアの幅が広がったり、収入アップの可能性が高まったりします。受験資格なしの国家資格に興味が湧いた方は、ぜひ取得にチャレンジして、キャリアアップを目指しましょう。