読み方を聞けば絶対に知っている単語なのに、漢字になるとわからなくなってしまう。それもまた、「日本語は難しい」と言われるゆえんですよね。今回は、そんな難読漢字のなかから、春に旬を迎える「野菜」の名前を3つピックアップしてみました。全問正解を目指して、さっそくクイズに挑戦しましょう!
第1問 「甘藍」の読み方は?
甘藍(カンラン)は、中国語で「葉牡丹」を意味する言葉です。日本に入ってきた当時は、いまと違って葉牡丹のような形状だったことから、この漢字が使われたとか。サラダから煮物まで、さまざまな料理に使える万能野菜です。
第1問の答え
答えは「キャベツ」です。
キャベツはヨ-ロッパ原産の古い野菜で、古代ギリシャ・ローマ時代から食されていたそうです。ただし、紀元前までのキャベツは結球しておらず、ケールのような葉キャベツだったとか。その後、長い歴史のなかで品種改良が繰り返され、現在の丸い形が生まれました。
日本にキャベツが伝わったのは江戸時代のこと。オランダ人によって伝えられたことから、「オランダ菜」と呼ばれていました。ただし、渡来したのが紅紫色の系統だったことから、もっぱら観賞用に使われていたようです。食用として本格的に栽培されるようになったのは、欧米の品種が入ってきた明治時代以降で、大正・昭和時代には日本の気候に適した品種が作り出されました。
キャベツは、収穫時期によって春キャベツ、夏秋キャベツ、冬キャベツに分けられ、それぞれ次のような特徴があります。
- 春キャベツ:収穫期は晩春から初夏。巻きがゆるく、葉がみずみずしい
- 夏秋キャベツ:収穫期は6~9月ごろ。巻きがしっかりとしていて、甘みが強い
- 冬キャベツ:収穫期は10月から翌年4月ごろ。巻きがしっかりしていて、葉肉も厚い
キャベツには、胃炎や潰瘍の回復効果があると言われますが、それはビタミンUを多く含んでいるため。ビタミンUには、胃酸の分泌抑制や胃腸粘膜の新陳代謝促進などの効果が期待されており、胃腸を強くすることで、免疫力も高まるそうですよ。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
からだにおいしい野菜の便利帳(高橋書店)
第2問 「竜髭菜」の読み方は?
主要な産地は、北海道や長野県。成長していく様子が竜の髭のように見えることから、「竜髭菜」という漢字が当てられたのだとか。ベーコンと組み合わせるのが定番ですが、サラダやパスタなどに使ってもおいしいですよ。
第2問の答え
答えは「アスパラガス」です。
アスパラガスは、ユリ科アスパラガス属の緑黄色野菜です。もともとはヨーロッパ、西アジアの原産で、紀元前2000年ごろにはすでに栽培されていたとされています。
日本には、18世紀にオランダから渡来しましたが、当時は庭園に植えて観賞用として楽しんでいたとか。その後、明治初期にアメリカ、フランスから再導入され、大正時代以降に本格的な栽培が始まりました。ただし、その頃主流だったのは、グリーンアスパラガスではなく、欧米への輸出用缶詰に使われたホワイトアスパラガスのほう。グリーンアスパラガスが広く出回るようになったのは、昭和40年代以降です。
ちなみに、グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスは同じ種類ですが、ホワイトアスパラガスは、芽が出る前に土をかぶせたり、遮光されたビニールハウス内で育てたりすることで、人為的に白く育てます。
食用にするのは、筆の穂先のような新芽と茎の部分で、穂先には毛細血管を丈夫にするルチンが多く含まれています。また、疲労回復に役立つアスパラギン酸や、皮膚や粘膜を丈夫にするカロテン、ビタミンC、B、E群なども豊富です。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
からだにおいしい野菜の便利帳(高橋書店)
第3問 「蚕豆」の読み方は?
漢字表記から、豆の一種であることは想像できますよね。日本の主な生産地は、鹿児島、千葉、愛媛、茨城など。塩ゆでにして食べるのが一般的で、ホクホクした食感とコクのある味わいは、お酒のおつまみにもぴったりです。
第3問の答え
答えは「ソラマメ」です。
ソラマメは世界最古の農作物の1つ。ピラミッドやトロイ遺跡からも化石が出土しているため、新石器時代から栽培されていたと考えられています。原産地も北アフリカ説、カスピ海沿岸説、西アジア説などさまざまで、正確なところはわかっていません。
日本に伝わったのは奈良時代で、中国を経由して来日したインドの僧が、行基という僧侶に贈ったのが最初だとされています。しかし、ソラマメが初めて文献に登場したのは17世紀のこと(1631年に記された、「多識篇」という書物に登場しています)。そのため、実際は江戸時代に伝わったという説もあります。何かと、謎の多い野菜ですよね。
ソラマメの表記には、「空豆」と「蚕豆」があり、前者はさやが空を向いてなることから付いた名前。後者はさやの見た目が蚕の繭に似ていることから付いた名前です。
栄養成分は、からだの組織を作るたんぱく質や、エネルギー代謝に役立つビタミンB群のほか、カリウム、鉄などのミネラルも豊富です。なお、ソラマメは空気に触れると一気に鮮度が落ちます。なるべくさやに入った状態で購入し、調理の直前にさやから出すようにしましょう。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
日本豆類協会公式ホームページ
からだにおいしい野菜の便利帳(高橋書店)