
資格を取って会計の知識を身に付けたいと思っても、「初心者でも取れるものはあるのだろうか」「資格はこれからの人生に役立つだろうか」とあれこれ考えてしまい、1歩目を踏み出せないケースは意外に多いものです。
でも、心配にはおよびません。初心者向けの会計資格には、基礎からしっかり学べて実務に直結するものも多くあります。そして、経理・事務職を目指している方や、ビジネススキルを高めたい方にとって、会計資格はキャリア形成の大きな武器になるはずです。
当記事では、会計の初心者でも無理なく学べるおすすめの資格や、ハイレベルな専門スキルが身に付く資格を厳選して紹介します。会計資格に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
会計資格とは?
会計資格とは、経理や財務の知識とスキルを証明する資格のことであり、簿記や公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランニング技能士などがその代表格です。
経理の仕事をするのに資格は必須ではありませんが、持っていることで大きなアドバンテージになります。経理職未経験者にとっては、知識・スキルの証明として有効に働くでしょう。企業のなかには、特定の資格保有者を評価するところも多く、場合によっては昇進や昇給につながるケースもあります。
経理の仕事では予算や収益、損益、経費などの管理が非常に重要となるため、資格学習を通じて基本的な知識・スキルを習得しておけば、業務の質も高まるでしょう。
また、会計や経理の知識・スキルは業界を問わず必要とされており、その汎用性の高さも魅力です。特に公認会計士、税理士などは独占業務資格であるため、将来的には独立開業も目指しやすいでしょう。
初心者におすすめの会計資格一覧

ここからは、初級者でも取り組みやすい資格を厳選して紹介します。日常業務や将来のキャリアアップにもつながる資格なので、これから会計を学ぶ方はチェックしておきましょう。
日商簿記3級・2級
日商簿記検定は、企業の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績と財政状態を管理するための知識・技能を証明する資格です。3級では仕訳や帳簿の記入といった商業簿記の基礎を身に付け、小規模企業の企業活動や会計実務に対応できるレベルを目指します。
試験では仕訳や帳簿作成、勘定記入、決算整理仕訳などに関する問題が出題されます。合格率は例年30〜50%となっているため、働きながらでも無理なく挑戦できるでしょう。
一方の2級では、商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)を扱い、財務諸表から経営内容を把握できるレベルを目指します。
2級は企業からの評価が高く、就職や転職活動でも大きなアピールポイントとなります。日商簿記3級から2級へと段階的にスキルアップして、会計分野への理解を深めましょう。
FASS検定(経理・財務スキル検定)
FASS検定は、経理・財務分野における実務スキルの習得度を測るための検定試験で、経済産業省が作成した「経理・財務サービススキルスタンダード」をもとに、アメリカのテスト理論を取り入れて作られました。合格・不合格ではなく、A〜Eの5段階で評価されるため、身に付けた実務能力を客観的に把握することが可能です。
ちなみに、最高評価であるAランクの得点は689点~800点となっており、「経理・財務分野について、業務全体を正確に理解し、自信を持って経理・財務部門の業務を遂行できるスキルがある」と評価されます。
試験は資産管理、決算、税務、資金の4分野から構成されており、経理・財務に関する幅広い知識が問われます。学習を通じて自身の知識を体系的に整理できるため、経理・財務の基礎を固めたい方には特におすすめです。
給与計算実務能力検定試験® 2級
給与計算実務能力検定2級は、給与計算業務の知識・スキルを客観的に判定するための検定試験です。試験は1級〜3級の等級に分かれていますが、受験資格に特別な制限はなく、どの級からでも挑戦できます。
2級では、給与計算実務に必要な基礎知識と法的知識、給与計算・賞与計算の演習など、実務に直結する内容が出題されるため、バックオフィス業務の基礎固めに役立つでしょう。
試験時間は120分で、四肢択一の知識問題(35問)と計算問題(5問)が出題されます。合格基準は、出題問題のうち70%以上の得点獲得となっており、基礎から丁寧に学習すれば初心者でも十分に合格を目指せます。
経理事務パスポート検定(PASS)3級・2級
経理事務パスポート検定(PASS)は、経済産業省の「経理・財務サービススキルスタンダード」に基づいて開発された、経理職に必要な実務スキルを身に付けるための検定プログラムです。検定には1~3級までの等級があり、受講者のスキルや経験に合わせてチャレンジできます。
3級は経理事務の入門コースと位置付けられており、事務スタッフとしての心構えや役割、日々の経費処理業務などを学びます。また、試験では経理の役割とコミュニケーション、帳簿書類の管理、領収証の取り扱いなどの知識が問われます。
2級では、より実践的な経理・会計業務を学ぶため、一定の経験を積んでいる方や自身の経理スキルを確認したい方向きです。学習を通じて簿記上の現金管理、小口現金の取り扱い、クレジット売掛金、請求業務の流れ、支払い業務の流れといった、幅広い知識が身に付くでしょう。
どちらの級もe-ラーニング形式で受講でき、時間や場所を選ばずに学習を進められる点が大きな特徴です。
建設業経理検定3級・2級
建設業経理検定は、建設業経理に関する知識と処理能力の向上を図るための資格試験です。3級では建設業簿記の原理や記帳、初歩的な原価計算が問われ、合格することで「建設業経理事務士」の資格が取得できます。
2級になると、原価管理や決算処理など実務で必要となる内容が増え、会社会計との連携についても理解を求められます。例年35〜50%程度の合格率となっており、合格すると「建設業経理士」の資格が得られます。
未経験からでも段階的に学べるため、建設業界へのキャリアチェンジを考える人でも安心して取り組めるでしょう。
ビジネス会計検定試験®3級・2級
ビジネス会計検定は、財務諸表に関する知識と分析力を評価する検定です。1級〜3級まで3つの等級があり、3級では貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の構造と読み方、財務諸表の基本的な分析などの問題が出題されます。簿記と違って仕訳や記帳の知識を必要としないため、初めて会計を学ぶ方でも無理なく取り組めるでしょう。
一方、ビジネス会計検定試験の2級では、財務諸表の構造や読み方、諸法令、財務諸表の応用的な分析(キャッシュフロー分析や損益分岐点分析、株価分析などを含む)が出題され、企業の経営状態や財務状況を理解する力が問われます。
学習を通じて、企業の経営状態を判断するための「会計リテラシー」が身に付くため、経理担当者以外の方にもおすすめできる検定です。
ファイナンシャル・プランニング技能検定3級・2級
ファイナンシャルプランナー(FP)は、顧客の資産に応じた貯蓄、投資、保険などのプランを立案・サポートする資格で、金融・税金・保険・不動産・住宅ローン・年金など、家計に関わる幅広い知識が求められます。
ファイナンシャル・プランニング技能検定は、1級、2級、3級に分かれており、それぞれに学科試験と実技試験が設けられています。3級はFPの入門編にあたるもので、学科試験はライフプランニング、保険、資産運用、税金、不動産、相続・事業承継の6分野から出題されます。合格率は例年80%程度と高めなので、初学者でも安心して挑戦できるでしょう。
2級の出題範囲も3級と同じ6分野ですが、法人向けの提案力や分析力も問われるため、より専門的な力が必要になります。
電子会計実務検定3級・2級
電子会計実務検定は、会計ソフトを活用した電子会計の実務スキルを評価する検定試験です。簿記の理論をベースに、会計ソフトの操作技術や会計データの分析・活用能力を問われる点が特徴で、日本商工会議所が主催しています。
3級では電子帳簿の出力や会計データの入力、データのバックアップなどの基本知識が求められ、100点満点中70点以上で合格となります。答案はインターネットを介して採点されるため、即時合否判定がわかるのも特徴の1つです。
2級では製造、販売、在庫管理、給与計算といった関連業務から生成される業務データの活用や、電子会計情報の活用、電子会計データの保管・管理方法などの知識・スキルが問われます。支店別・営業所別など複数拠点の会計情報を扱う場面も想定されており、より実務的な能力が必要になるでしょう。
消費税法能力検定
消費税法能力検定は、消費税に関する知識や理解度を測るための検定です。検定には1級〜3級までのレベルが設けられており、初学者から実務者まで幅広く対応しています。
出題範囲は課税標準額の基本的計算、地方消費税の簡単な計算、課税標準および税率、税額控除など多岐にわたり、会計処理時の消費税の取り扱いや税務署への提出書類作成などの知識・スキルが問われます。
正しい税務処理能力を身に付けることは、企業内での信頼向上や税務関連のキャリア形成につながるため、税務会計の仕事に従事する方におすすめの資格と言えるでしょう。
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)は、WordやExcel、PowerPointといったマイクロソフトオフィス製品の操作知識とスキルを証明する国際資格です。
実際にパソコンを操作する実技形式で行われるのが特徴で、オフィスのバージョンごとに各アプリケーションの試験が用意されています。なお、WordとExcelの試験は「一般レベル」と「上級レベル(エキスパート)」の2段階で構成されており、上級レベルではより高度な機能を駆使した作業能力が求められます。
対策学習を通じて資料作成や表計算、プレゼン資料の作成などのスキルが高まり、より高度な業務に対応できるようになるのもMOSのメリットです。多くの業種・職種で評価されていることから、就職や転職活動での自己アピールにも効果的でしょう。
ハイレベルな専門スキルが身に付く!難易度が高い会計資格一覧

業務の信頼性を高めたい方や、実務面の知識とスキルを向上させたい方にとって、難関資格への挑戦は自分を成長させるきっかけになります。
より高度な専門知識や応用力、分析力を習得し、会計・財務・経営の分野で活躍したい方は、以下に紹介するハイレベルな会計資格に目を向けてみてはいかがでしょうか。
公認会計士
公認会計士は、医師や弁護士と並ぶほど非常に信頼性の高い資格です。監査・会計のスペシャリストとして、企業の財務諸表の監査や税務サポート、経営コンサルティングなどを行い、健全な経済社会の維持・発展に貢献するのが公認会計士の主な役割となります。
代表的な職場は、監査法人や会計事務所、コンサルティング会社、一般企業などですが、実績を積んで独立開業するケースも少なくありません。税理士登録をして税務の代行業務や相談業にも従事できるため、会計・経営・税務のプロとして幅広く活躍できる職業と言えるでしょう。
2024年の公認会計士試験の合格率は7.4%と難易度は高いものの、その分高い専門性と信用力を手に入れられるのがメリットです。
出典:金融庁「令和6年公認会計士試験の合格発表の概要について」
税理士
税理士は、「税務の代理業務」や「税務相談」「税務書類の作成」を独占業務とする国家資格です。
所得税や法人税、消費税などは、納税者自身が申告して納める仕組みですが、税法は複雑でわかりにくいため、正確に対応するには専門知識が不可欠です。そのため、納税者に代わって申告手続きに必要な書類を作成したり、承認申請を代理したりするのが税理士の主な役目となっています。
受験科目には会計学科目(簿記論・財務諸表論)と税法科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法など)があり、税法科目には学歴、資格、職歴などの受験資格が設けられています。
資格取得の難易度が高い分、社会的信頼性が高く、資格取得後は税理士事務所や会計事務所、金融機関、企業の財務部門などの幅広い職場で活躍できます。また、実績を積んだうえで、独立開業を目指す人が多いのも税理士の特徴です。
米国公認会計士(USCPA)
米国公認会計士(USCPA:U.S.Certified Public Accountant)は、米国各州が認定する国際的な公認会計資格です。国際的に通用するグローバルな会計資格のため、取得すれば日本だけにとどまらない幅広いキャリアパスが描けます。
試験はすべて英語で実施され、出題範囲も広いため、合格するには計画的な学習と継続的な努力が求められるでしょう。
しかし、得られるメリットは大きく、合格後は大手監査法人や税理士法人、外資系企業、日系企業の経理・財務部門など幅広い職場で活躍できます。USCPAは英語と会計スキル両方の実力を証明できるため、グローバル企業の海外勤務や多国籍プロジェクトへの参加を目指す人にとっても、強力な後押しになります。
日商簿記1級
日商簿記1級は、会計分野における高度な専門知識を証明できる検定試験です。商業簿記や会計学、工業簿記、原価計算などについてより深く学ぶ必要があるため、理論的な裏付けを持って経営分析・財務判断を行う力が身に付きます。
試験内容は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4つ。簿記の手続きだけでなく、「なぜその処理が必要なのか」を理解し、応用する力が求められることから、非常に難易度の高い試験と言えるでしょう。
ただし、学習を通じて培われる論理的思考力は、経理・会計業務はもちろん、経営や企画部門でも生かせるため、合格すれば就職・転職時の大きなアピールポイントになります。合格者には税理士試験の受験資格が与えられ、上位資格への足がかりにもなります。
中小企業診断士
中小企業診断士は、企業の経営状態を総合的に診断し、経営課題に対して助言や支援を行う専門家です。主な仕事内容は、経営状況の把握や分析、経営改善計画の策定、改善計画の実行支援などで、業務を円滑にこなすには高い専門性と論理的思考力、コミュニケーション能力が求められます。
試験は1次試験(筆記)、2次試験(筆記・口述)に分かれており、学習を通じて、「ヒト・モノ・カネ・情報・法律・外部環境」といった経営資源を横断的に見る力が身に付きます。そうした知識とスキルは、経営企画や事業戦略、マネジメントに関わる業務において大きな武器となるでしょう。
また、中小企業診断士の資格を取得することで、ビジネスパーソンとしての信頼性が高まり、より重要な役割を担うことが期待できます。
代表的な職場は、コンサルティング会社や中小企業支援機関、会計事務所、企業の経営部門などですが、独立開業という選択肢も視野に入れられるため、資格取得によってキャリアの可能性は大きく広がるでしょう。
出典:一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験」
米国公認管理会計士(USCMA)
米国公認管理会計士(USCMA:US Certified Management Accountant)は、米国公認会計士(USCPA)と並ぶ会計分野の国際資格です。
財務や管理会計の分野で活躍したい人に向けた資格となっており、学習を通じて予算編成や業績管理、財務分析、リスク管理など、企業経営に欠かせない幅広いスキルが習得できます。
試験はすべて英語で実施され、企業財務・リスク管理・経営戦略といった分野の知識が問われるため、合格すれば英語力とビジネスに必要な判断力、分析力を同時に証明できるでしょう。
企業の経営企画や管理部門、コンサルティング領域などでの評価が高いことから、就職や転職、キャリアアップにも大きく貢献する資格です。経営判断に関わる仕事を目指す方にとって、USCMAは大きな武器になるでしょう。
出典:LEC会計大学院「U.S.CMA(米国公認管理会計士)勉強会」
まとめ
会計の知識は、多くの業界で役立つ汎用性の高いスキルです。特に日商簿記やFASS、給与計算実務能力検定など、実務での評価が高い資格は、将来的なキャリアの土台を作るための大きな力になるでしょう。
会計資格をスキルアップにつなげる場合は、自分の目標やキャリアプランに合ったものを選び、段階的に知識とスキルを積み上げていくことが大切です。この記事を参考にしながら、まずは1歩目を踏み出してみましょう。
※当記事は2025年6月時点の情報をもとに作成しています
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