
産休・育休は、仕事から一時的に離れる期間であるとともに、将来のキャリアを見つめ直す貴重な時間でもあります。
しかし、将来を考えるにあたっては、「復職後に以前と同じように働けるだろうか」「子育てと両立できるだろうか」などの不安や疑問を感じることもあるでしょう。そうした中で、自信と選択肢の拡大につながる有効な手段となるのが「資格」の取得です。
当記事では、産休・育休中に取りやすく、復職や再就職に生かせる資格を紹介するとともに、費用負担を軽減できる教育訓練給付金制度についても解説していきます。
産休・育休中に取ってよかったと思えるおすすめ資格
産休・育休中は、将来の復職や転職を見据えて資格取得に挑戦する好機です。たとえば、産休に入ってから出産するまでの間は、時間に少し余裕ができます。出産後も、育児に慣れてくれば、子どもの睡眠中などに勉強の時間がとれるようになるでしょう。
育休後に復職、あるいは仕事と家事の両立を目指すのであれば、そうした時間をスキルアップに充てるのは、とてもよい方法です。
なお、復職の選択肢を広げるにあたっては、実務に直結しやすく、履歴書に記載できる資格を選ぶのがおすすめです。ここでは、産休・育休中に「取ってよかった」と思える、実用性の高い資格を10種類紹介しましょう。
TOEIC
TOEIC(Test of English for International Communication)は、英語による実用的なコミュニケーション能力を評価する国際的なテストです。
TOEICには、「TOEIC Listening & Reading Test(L&R)」と「TOEIC Speaking & Writing Tests(S&W)」があり、これによって「聞く・読む」「話す・書く」という4つの能力を測ります。
合否ではなくスコア(10~990点で評価)で結果が示されるのもTOEICの特徴で、実力を可視化しやすいことから就職や転職、昇進、海外赴任など、さまざまな場面で活用されています。ちなみに、特別な受験資格はなく、誰でも受験可能です。
難易度は目標スコアによって異なりますが、履歴書に記載できる目安は一般的に600点以上とされています。復職にあたって、英語力を客観的に示したい方は、受験を検討してみるとよいでしょう。
(出典:TOEIC Programとは|【公式】TOEIC Program|IIBC)
マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)
MOSは、WordやExcelといったMicrosoft Office製品の操作スキルを証明する資格です。実際にパソコンを操作する実技形式で行われるのがMOSの特徴で、Officeのバージョンごとに各アプリケーション(Word・Excel・PowerPoint・Access・Outlook)の試験が用意されています。
また、WordとExcelの試験には、一般レベルと上級レベルが用意されており、一般レベルは基礎操作を中心に出題されるため、産休・育休中の独学でも挑戦しやすい試験といえます。
学習を通じて資料作成や表計算、プレゼン資料作成などのスキルが身につくため、事務職への復職や在宅ワークを希望する際には、大きなアピール材料になるでしょう。Microsoft社自身が認定していることから、資格の信頼性が高いのもメリットの一つです。
ITパスポート
ITパスポートは、ITに関する基礎知識を測るための国家試験です。受験資格に制限はなく、CBT方式で通年実施されています。
出題範囲にはITの基礎知識に加えて、経営戦略、財務、法務、セキュリティ、プロジェクトマネジメントなどの分野も含まれており、学習を通じてビジネスに必要な幅広い知識・スキルが身につくでしょう。
難易度は、ITの国家試験の中で入門レベルと位置づけられており、初学者でも十分に対策が可能です。
現代のビジネスシーンでは、営業、経理、法務など、職種に関係なく一定のITスキルが求められるため、取得すれば復職の場面でも大いに役立つでしょう。未経験からIT業界への転職を考えている方にもおすすめです。
(出典:【ITパスポート試験】iパスとは)
日商簿記(2級)
日商簿記は、企業の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を管理する技能を証明するための検定試験です。
検定は1級、2級、3級、初級に分類されており、3級では仕訳や帳簿の記入といった商業簿記の基礎知識を学びます。一方、2級では商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)を扱い、財務諸表から経営内容を把握できるレベルを目指します。
統一試験の合格率は3級が30~40%台、2級が20~30%台となっており、2級の難易度は決して低くありません。ただし、2級以上は企業からの評価が高いため、経理職はもちろん営業を目指す際にも大きなアピールポイントとなるでしょう。家計管理の知識を深めたい場合にも有用です。
(出典:簿記 簿記とは | 商工会議所の検定試験)
登録販売者
登録販売者は、ドラッグストアや薬局で一般用医薬品(第2類・第2類)を販売できる専門資格です。試験は都道府県ごとに年1回程度実施され、合格後は販売従事登録の申請と所定の実務経験を経て、登録販売者として認定されます。
出題範囲は医薬品の基礎知識、人体の働き、薬事関連法規などで、全体の7割以上の得点を取ることと、各項目において出題数の3.5〜4割以上正解することが合格基準です。
販売登録者の就職先である薬局やドラッグストア、量販店は全国各地にあるため、資格を取得すれば多くの職場から就職先を見つけられます。シフト制勤務が多く、家庭と両立しやすいのも特徴で、医療・健康分野で再就職を目指す方には注目の資格といえるでしょう。
(出典:令和7年度登録販売者試験について|登録販売者試験について|東京都保健医療局)
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)は、医療事務に必要な診療報酬請求(レセプト業務)や受付、患者接遇などの知識と技能を証明する民間資格です。
受験に学歴や年齢の制限はなく、試験では診療報酬請求事務、レセプト点検、患者接遇など、実務に直結する内容が出題されます。ただし、学科・実技とも参考書やノートを持ち込んで受験できるため、きちんと学習すれば未経験者でも取得しやすいでしょう。
医療事務関連の資格の中でも最大規模の資格であり、長年の実績もあるため、取得すれば病院やクリニックの窓口業務への就職・復職に役立ちます。また、医師の働き方改革を背景に、メディカルクラークの需要が高まっているのも、資格取得のメリットです。
(出典:医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)|資格試験/技能認定|日本医療教育財団)
調剤報酬請求事務技能認定
調剤報酬請求事務技能認定は、調剤薬局での診療報酬明細書(レセプト)作成や保険請求業務の知識と技能を証明する民間資格です。一般財団法人日本医療教育財団が主催しており、所定のカリキュラムで技能を習得した後、修了試験に合格することで取得できます。
修了試験は学科(三肢択一式)と実技(調剤報酬明細書の作成・点検)で構成され、学科は医療保険制度、高齢者医療制度、公費負担医療制度などの6ジャンルから出題されます。一方、実技では調剤報酬明細書の作成・点検の技能が問われ、合格基準は学科・実技ともに得点率90%以上です。
医薬分業が進む現在は、薬局における請求事務業務が増大しており、資格を取得すれば調剤薬局での事務職や、医療関連職への再就職を目指す際に有利に働くでしょう。
(出典:調剤報酬請求事務技能認定|資格試験/技能認定|日本医療教育財団)
2次元CAD利用技術者
2次元CAD利用技術者試験は、コンピュータを用いて図面を作成するCADシステムの操作スキルを認定する民間資格です。
資格は1級(機械・建築・トレース)、2級、基礎に分かれており、1級は実務経験1年以上、または1年以上の就学経験がある層を想定した内容となっています。なお、試験は実技試験と筆記試験で構成され、特別な受験要件はありません。
ものづくりの現場や建築の現場では、3次元設計が進む一方で2次元図面の需要も依然として高く、CADを多用する製造業や建設業、土木業への復職では高評価が期待できます。
(出典:2次元CAD利用技術者試験 概要 - CAD利用技術者試験 - ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会)
子育て支援員
子育て支援員とは、「子ども・子育て支援新制度」に基づいて生まれた認定資格で、保育や子育て支援分野で働くために必要な知識・技能を修得した人に与えられます。
取得するには都道府県などが実施する「基本研修」と「専門研修」を修了し、子育て支援員研修修了証書を受けることが必要です。
講習は、基本研修が子育て支援の基本、専門研修は地域保育コース・放課後児童コースなど4つのコースに分かれており、それぞれに必要な知識・技能の習得を目指します。
資格取得後は、小規模保育施設や家庭的保育事業、放課後児童クラブなどさまざまな職場で活躍できるため、保育の仕事に関心がある方はもちろん、育児経験を生かして地域に貢献したい方にも適した資格です。
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)は、年金や税金、住宅ローン、保険、年金など、お金に関する幅広い知識を持ち、相談者の資産設計をサポートする国家検定です。検定には1級から3級までの等級があり、2級以上は一定の実務経験や関連資格が受験要件となります。
試験は学科試験(ライフプランニング、資金計画、リスク管理、金融資産運用などの6分野)と実技試験で構成され、難易度は3級が基礎レベル、2級は実務者向けのレベルとなっています。
身につけた知識・スキルは、一般企業の経理・財務部門や金融機関、保険会社への就職・転職に役立つだけでなく、自分自身の家計管理や資産形成にも活用できるでしょう。
(出典:FP技能検定とは | 日本FP協会)
産休・育休中に資格を取得するメリット
産休・育休中の資格取得は、単なるスキルアップにとどまらず、復職や将来のキャリア形成においても大きな意味を持ちます。産休・育休の期間は、仕事から一定期間離れることで不安を感じやすくなりますが、学習という前向きな行動を取ることで、自信と安心感につながるでしょう。
ここでは、産休・育休中に資格を取得する具体的なメリットを解説します。
産休・育休中の時間を有効活用できる
自宅で過ごす時間が増える産休・育休中は、勉強やスキルアップのチャンスでもあります。出産前のまとまった時間を利用したり、育休中の細切れ時間(子どもがまとまって眠る時間帯など)を積み重ねたりすることで、効率的に勉強できるでしょう。
資格取得という明確な目標があると、空いた時間を計画的に使う意識も高まります。結果として、ブランク期間を「前向きな自己投資の時間」に変えられるでしょう。
「やればできる」という自信につながる
資格取得は、専門知識を身につけるだけでなく、学びに対する意欲を示すことにもつながります。
復職時に「育休中に簿記2級を取得しました」と具体的に伝えられれば、前向きな姿勢が周囲に伝わるでしょう。職場側も「休職中も自己研さんを続けていた」という安心感を持てるため、復帰がよりスムーズになるはずです。
さらに、試験合格という成果は、「やればできる」という自己効力感を高めてくれます。ブランクへの不安を抱えがちな時期だからこそ、資格によって努力が可視化されることは大きな支えになります。
育休明けのキャリアアップに役立つ
産休・育休中の資格取得は、新しい知識・スキルを学ぶだけでなく、キャリアの幅を広げるきっかけにもなります。
簿記やFPを取得して経理職に挑戦する、ITパスポートでITの基礎を学んでDX関連職を目指すなど、復職後のキャリアを見据えて資格を選べば、将来の選択肢もぐっと広がるでしょう。もちろん、転職やキャリアチェンジの際にも大きな武器になります。
また、企業によっては、資格取得に対する奨励金制度を設けている場合もあります。そうした制度を上手に活用すれば、産休・育休をキャリアの空白期間ではなく、次のステップへの準備期間にできるはずです。
産休・育休中に使える給付金「教育訓練給付金」とは
産休・育休中に資格取得を目指す場合、一定の条件を満たせば「教育訓練給付金」を活用できる可能性があります。
教育訓練給付金は、働く人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的とした公的制度です。具体的には、厚生労働大臣が指定する講座を修了した際に、受講者本人が支払った受講費用の一部がハローワークから支給されます。
対象となる教育訓練は、レベルや目的に応じて「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3種類に分かれており、それぞれに給付率や上限額、要件が異なります。
育休中にスキルアップを検討している方にとっては、費用負担を軽減できる心強い制度となるため、事前に詳細を把握しておくとよいでしょう。それぞれの制度内容と特徴を詳しく解説します。
一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、雇用の安定や再就職の促進を目的とした制度で、厚生労働大臣が指定した教育訓練講座を受講・修了した場合、支払った教育訓練経費の20%(上限10万円)がハローワークから支給されます。比較的短期間で修了できる講座が多く、簿記、ITパスポート、語学資格など幅広い分野が対象となっています。
支給対象となるのは、受講開始日に雇用保険の一般被保険者である方、または離職後1年以内の方で、原則として雇用保険の被保険者期間が3年以上必要です。ただし、初めて教育訓練給付金を利用する場合は、加入期間が1年以上あれば対象となります。なお、受講開始日前3年以内に給付金を受給している場合は、対象外となります。
給付を受けるためには、講座修了日の翌日から起算して1か月以内にハローワークに申請しなければなりません。育休中でも使いやすい制度であり、資格取得の第一歩として活用するのもよいでしょう。
(出典:厚生労働省「教育訓練給付金」)
特定一般教育訓練給付金
特定一般教育訓練給付金は、早期の再就職やキャリア形成を支援するための制度で、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了した場合、受講費用の40%(上限20万円)がハローワークから支給されます。
また、2024年10月1日以降に受講を開始した方については、訓練修了後に資格を取得し、
1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合に追加給付(教育訓練経費の10%、上限5万円)が支給され、基本給付と合わせて最大50%(上限25万円)となります。
対象者は、受講開始日に雇用保険の被保険者であり、加入期間が原則3年以上ある方、または離職後1年以内で同様の加入期間を満たす方です(初回利用の場合は、加入期間1年以上で対象)。受給には訓練前キャリアコンサルティングを受け、「ジョブ・カード」の交付を受けた上で、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認を行う必要があります。
IT分野や医療・福祉分野など、比較的専門性が高い資格が対象になることが多いため、復職にむけて本格的なスキル習得を目指す方に適した制度です。
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、中長期的なキャリア形成を支援するための制度で、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講した場合、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が、6か月ごとに支給されます。
さらに、講座修了後に資格を取得し、修了日の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として就職した場合は、給付率が70%(年間上限56万円)に引き上げられます。
また、2024年10月1日以降に受講を開始した方で、訓練修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇した場合は、最大80%(年間上限64万円)まで給付率が引き上げられます。給付は最長3年間で、最大192万円まで受給可能です。
対象となるのは、受講開始日に雇用保険の被保険者であり、加入期間が原則3年以上ある方、または離職後1年以内で同様の条件を満たす方です(初回利用の場合は2年以上で対象)。受給には、訓練前キャリアコンサルティングの実施と、受給資格確認手続きが必須です。
看護師、保育士、専門職大学院(MBAなど)といった高度な専門資格の取得を目指す場合に活用されることが多く、大きなステップアップを目指す方にとっては有用な制度といえるでしょう。
まとめ:育休・産休中に資格取得を目指してみては?
産休・育休中の資格取得は、ブランク期間を前向きな自己投資の時間に変える有効な選択肢です。
産休・育休中の取得に向いている資格は、TOEICやMOS、日商簿記といった汎用性のある資格から、登録販売者や医療事務のように専門性の高い資格まで幅広くそろっているので、目的に応じて選ぶことが大切です。
また、教育訓練給付金を活用すれば、条件次第で受講費用の一部が支給されるため、経済的負担を抑えながらのスキルアップが可能になります。将来どのように働きたいのかを明確にした上で、目標に合った資格を取得して、復職後の安心につなげましょう。
※当記事は2026年2月時点の情報をもとに作成しています