通訳になるのに有利な資格とは?通訳者に必要なスキル・勉強法も解説

通訳に有利な資格とは?通訳者に必要なスキル・勉強法も解説「通訳として働くのに資格は必要なの?」と、テレビやメディアで通訳をしている人をみて疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

この記事では、通訳の仕事をするうえで有利な資格を8つ紹介します。通訳に求められる語学力以外のスキルや、通訳になるための勉強の仕方など、通訳を目指す人にとって気になる内容をまとめています。通訳の資格や仕事について、ぜひこの記事で理解を深めましょう。

通訳に資格は必要?

通訳の業務を行ううえで、必須の資格はありません。「〇〇資格○級以上でなければ、通訳にはなれない」といったような基準は、特に設けられていないのです。ですが、通訳関連の資格を取ることには、通訳としての能力を客観的に証明できるというメリットがあります。

資格を取得しておけば、確かな通訳スキルを持つ人としてクライアントや社内の人などから信用され、仕事を依頼されやすくなることが期待できるでしょう。また、自分の通訳能力をアピールし、仕事のチャンスを自らつかむことにも、資格は役立ちます。

もちろん、合格を目指して学ぶ過程で、通訳に必要な知識と技能が体系的に身に付く点も、資格取得の大きなメリット。資格は必要ないとはいえ、自分の通訳能力を高めるうえでも、仕事を得やすくするうえでも、通訳を目指す人が資格を取る意義は大きいと言えます。

通訳になるうえで有利な資格8選

通訳の資格には、観光、ビジネス、医療などさまざまな分野における国家資格や民間資格があります。語学力を証明する資格も、通訳の仕事に役立ちます。ここからは、通訳として働くうえであると有利な資格を8つ紹介しましょう。

全国通訳案内士

全国通訳案内士の資格は、報酬を得て外国人旅行者に同行し、外国語で旅行案内ができる能力を証明する国家資格です。国家試験に合格し、居住する都道府県に登録した人が、全国通訳案内士として活動できます。

国家試験は、筆記と口述の二段階構成。語学力(10カ国語から選択)から、日本の地理・歴史・文化の知識、通訳案内の現場対応力まで、幅広い知識・能力を問う内容となっています。

この資格を取得すると、有償での通訳案内ができる専門性が評価され、旅行会社や自治体などからの信頼を得やすくなることが期待できます。2025年度の最終合格率は14.7%という難関資格ですが、観光関係の通訳に興味がある方は、挑戦を検討してみると良いでしょう

(出典:全国通訳案内士試験概要|JNTO(日本政府観光局)

地域通訳案内士

地域通訳案内士の資格は、特定の地域内に限り、報酬を得て外国人旅行者に同行し、外国語で旅行案内ができる能力を証明する国家資格です。

地域通訳案内士は、東京都や京都市といった制度導入地域(42地域。2025年4月1日時点)において、歴史・地理・文化・自然などの現地情報に精通した人材として、通訳や観光・旅行の案内を行います。

地域通訳案内士の資格を取得できるのは、制度導入地域で実施される研修を修了し、登録を受けた人です。研修の時期や内容、資格取得に必要な語学水準は地域によって異なるため、興味がある方は募集要項で確認しましょう。

資格を取得すると、地域の観光現場で不足しがちな、通訳ができるガイドの需要に応えることができます。通訳がしたい人だけでなく、地元で就業したい人にもおすすめです。

(出典:地域通訳案内士になるには | 地域通訳案内士とは | 通訳ガイド制度 | 観光政策・制度 | 観光庁

TOBIS(ビジネス通訳検定)

TOBIS(ビジネス通訳検定)は、ビジネスシーンにおける通訳の技能を判定する検定です。日本語・英語間の通訳技術に加え、ビジネス分野の頻出語彙や基礎知識も測ります。

試験は逐次通訳試験と同時通訳試験の2種類。どちらもヘッドセットで音声を聞き、マイクで通訳音声を録音する形式です。

逐次通訳試験では、成績によって4~2級および不合格の判定が行われます。4級は英語コミュニケーションをサポートできるレベル、3級は初歩的な逐次通訳ができるレベル、2級はまとまった長さの通訳を、精度を損なわずに行えるレベルです。

同時通訳試験では、2級取得者を対象に、逐次通訳でも同時通訳でも柔軟に対応できるレベルの1級の能力を判定します。

TOBISで級を取得すると、通訳者としての能力を履歴書やプロフィールで明示でき、自分のレベルに合った通訳業務を探しやすくなります。ビジネス通訳に携わりたいなら、まず逐次通訳試験で2級の合格を目指すことから始めると良いでしょう。

(出典:TOBIS ビジネス通訳検定

一般通訳検定

一般通訳検定(TOUI)は、コミュニティ通訳と呼ばれる、行政や学校、病院、警察などにおける通訳の技能を測る検定です。対象言語は英語を含む7カ国語で、試験内容は筆記と実技(逐次通訳)。受験者は初級・中級・上級のいずれかを選び、結果に応じて10~1級の判定を受けます。

なかでも通訳者を目指す人に推奨されているのは、4~6級にあたる中級です。6級は交通案内や遺失物問い合わせ、5級はイベントでの接遇や誘導・施設案内、4級は行政窓口での手続き説明や展示会での簡単な商談で、通訳ができるレベルとされています。4級を取得すると、3級以上にあたる上級の受験資格が得られます。

在留外国人が増加を続けるなか、一般通訳検定で級を取得することは、国際社会を支える一員となるうえで役立つでしょう。級が細かく分かれているため、自分の通訳能力の把握や、学習目標の設定にも使いやすいと言えます。

出典:一般通訳検定について │ 一般社団法人 通訳品質評議会 Council for Interpreter’s Quality and Competence)

医療通訳技能検定試験

医療通訳技能検定試験は、医療に関わる通訳の技能を評価する検定です。対象言語は英語を含む6カ国語。人間ドックや慢性疾患などの通訳ができるレベルの2級と、がんなど重度疾病を含む医療全般の通訳ができるレベルの1級が設けられています。

受験資格があるのは、医療通訳養成講座の修了者や、実務経験が1年以上ある人などです。試験は、筆記と実技(対面ロールプレイ)。筆記では医学知識、医療制度、医療通訳者の倫理・行動規範などが幅広く問われ、実技では医療知識、通訳力に加え礼儀や態度も評価対象となります。試験の成績により、2級・1級・不合格の判定がなされます。

英語・中国語での合格後は、指定の講習会受講を経て「国際臨床医学会(ICM)認定医療通訳士」としての登録申請につなげることが可能。また、1級合格者は、病院実習などの機会も得られます

医療通訳者としての道を開きたい人は、まず養成講座の詳細を確認するとことから始めてみましょう。

(出典:検定試験 - 一般社団法人日本医療通訳協会概要|国際臨床医学会

TOEIC

TOEICは、日常生活やグローバルビジネスにおける英語コミュニケーション能力を測定する、世界共通のテストです。TOEICの結果(スコア)は、日本語・英語間の通訳に不可欠な英語力の客観的な証明となります。

試験の種類は、聞く・読む力を測るTOEIC Listening & Reading Testや、話す・書く力を測るTOEIC Speaking & Writing Testsなどです。これらで下記いずれかのスコアを取得すると、全国通訳案内士の国家試験で外国語(英語)の筆記試験が免除になるというメリットがあります。

  • Listening & Reading:900点以上(990点満点)
  • Speaking:160点以上(200点満点)
  • Writing:170点以上(200点満点)

TOEICは通訳の技能を測るものではありませんが、TOEICを受けることは、通訳に求められる英語の理解力と発信力を高めるための、良い学習機会となります。スコア目標を設定しながら受験を重ねることで、自身の英語力の伸びも確認しやすいでしょう。

(出典:TOEIC Programとは|【公式】TOEIC Program|IIBC

IELTS

IELTSは、英語圏での留学・就労・移住に向けて英語力を証明することを目的とした、グローバルスタンダードな試験です。

大学・大学院留学希望者向けのアカデミック・モジュールと、就職・移住希望者向けのジェネラル・トレーニングモジュールの2種類の試験があり、それぞれで英語の4技能を測定します。結果は1.0~9.0のバンドスコアで示され、通訳能力の土台である英語力の客観的な証明となります。

IELTSでは、海外生活やアカデミックな場面に即した英語力が問われます。IELTSは通訳能力を測る試験ではないものの、IELTSを受験するなかで実践的な英語力を鍛えることは、通訳のスキル向上に役立つでしょう

(出典:IELTS 公式サイト|公益財団法人 日本英語検定協会

実用英語技能検定

実用英語技能検定(英検)は、幅広い年代が受験する国内最大級の英語検定試験です。1級から5級までの8つの級別に、日常生活やビジネス、社会的な場面で求められる英語力を測ります。

英検は、通訳そのものに関する資格ではありませんが、実力に合わせて級を上げながら、通訳の土台となる英語4技能を段階的に鍛えるのに有効です。スピーキング試験(面接)対策のなかで即答力や要約力をトレーニングすることも、通訳の練習に通じます。

なお、最上級の英検1級に合格すると、全国通訳案内士国家試験で外国語(英語)の筆記試験が免除されます。国家資格取得を目指す人をはじめ、通訳になりたい人にとって、英検は受験する価値のある検定だと言えるでしょう。

(出典:英検について | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

通訳に求められるスキルとは?

通訳に興味がある人は、必要な資格だけでなく、どのようなスキルが重要なのかも気になるのではないでしょうか。もちろん高い語学力は不可欠ですが、「聞く・考える・話す」を同時に進める通訳に必須のスキルは、それだけではありません。

ここから、仕事の品質を左右する、通訳に大切な3つのスキルを紹介します。

通訳に求められるスキルとは?

コミュニケーション能力

通訳者には、話者の発言を正確に理解し、場面に合った言葉で過不足なく、別の言語に変換する力が必要です。

通訳者は、話者の言葉に婉曲表現や主語の省略などがあっても、誤解が生じないよう適切な言葉に置き換えて、相手方に橋渡しを行います。話者たちの立場を踏まえ、口調や敬語、情報量を調整することも必要。通訳者には、単なる語学力を超えたコミュニケーション能力が求められると言えます。

柔軟性

通訳者には、予期しない変化へ対応する力も必要です。進行の変更や想定外の発言、機材トラブルなどがあっても、優先順位を都度判断して必要な確認を最短で行い、通訳を止めないことが求められるのです。

また、途中で用語が変わった場合に、即座に整合性を取れる対応力も重要。通訳者には、状況に合わせ、慌てず柔軟に対処する力が必須です。

担当分野についての知識

通訳者は、自分が通訳する分野についての専門知識を身に付けておく必要があります。背景知識があるほど、正確でスピーディな通訳をすることができます。

医療、法律、IT、製造といった各分野における用語や慣行を事前に調べたうえで、関連資料に目を通し、用語集を整備することも重要。これにより、訳語の一貫性を保ちながら、通訳の精度を高めることができます。

通訳の年収はどのくらい?

「資格を取って通訳を目指してみようかな?」と考える時、将来の年収が気になることも多いでしょう。

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、通訳者の平均年収は591万円(2024年)です。

ただし実際の年収は、働き方や分野などによって変わります。通訳者は、企業に雇用されて社内通訳者となるほかは、兼業やフリーランスとして働くケースが一般的です。

社内通訳者の収入はある程度固定的ですが、フリーランスの収入は稼働量に左右されます。また、通訳者としての実績や能力によっても収入は変動するということを、併せて覚えておきましょう。

なお、観光庁の調査によれば、全国通訳案内士の資格取得者が1日1案件あたりで得る平均報酬額は、割合の大きい順に下記の通りでした(2023年)。

  • 20,000~30,000円未満:35.5%
  • 30,000~50,000円未満:24.6%
  • 15,000~20,000円未満:14.6%

「国家資格を取って外国人旅行者に通訳案内をした場合の報酬は、いくらぐらいなのだろう?」と気になる方は、上記の数値を参考にしてみてください。

▶通訳の収入や求人をもっと見てみたい方は、こちらもチェック!

(出典:職業情報提供サイト job tag「通訳者」観光庁「通訳案内士に対するアンケート調査 集計結果まとめ」

通訳になるための勉強法とは?

通訳に必要な資格やスキルを調べるなかで、具体的な勉強法を知りたくなってきた方もいるでしょう。ここからは、通訳の勉強の仕方を簡単に紹介します。

通訳の勉強は、「聞いた内容を瞬時に理解し、別の言語で再構成して声に出す」というスキルを中心に練習することが重要です。具体的には、まずは逐次通訳を想定し以下のトレーニングを行いましょう。

  • クイック・レスポンス:単語が聞こえたら、反射的にその訳を言う練習
  • パラフレージング:文章を、意味を変えずに別の表現に置き換える練習
  • リテンション:聞こえた文章を、一定の時間正確に記憶する練習
  • リプロダクション:聞こえた文章を、声に出して再現する練習

また、シャドーイング(聞こえてくる文章を追いかけるようにしながら、真似して言う練習)で発音やリズムを習得し、言語能力そのものを向上させることも、通訳の勉強に効果的です。

海外のニュース番組やドラマなどを録画し、日本語の主音声と原語の副音声を聞き比べて訳を確認するほか、新聞などにも触れて語彙を増やしたり、数字や固有名詞はメモを取る癖を付けたりするのも良いでしょう。

独学で通訳を目指す道もありますが、限界を感じたら通訳スクールで専門家から指導・評価を受けると、上達が早まります。

まとめ:通訳の必須資格はないが、資格があると仕事の獲得に有利!

通訳として働くうえで必須の資格はありませんが、資格を取得しておくと、語学力や専門性を示すことができ、通訳の仕事を獲得しやすくなります。

有利となる資格には、全国通訳案内士と地域通訳案内士の2つの国家資格のほか、TOBIS(ビジネス通訳検定)や医療通訳技能検定などさまざまなものがあります。目的や自分のレベルに合う資格・検定を探して、挑戦してみると良いでしょう。

また、通訳になるには、資格だけでなくコミュニケーション能力や柔軟性、担当分野についての専門知識も重要です。通訳の道に関心がある方は、ぜひこの記事を参考に、通訳に求められる資格・スキルを得ていってください。

※当記事は2026年3月時点の情報をもとに作成しています