
資格手当とは、特定の資格を保有している社員に対して企業が支給する手当のことで、専門性を評価する仕組みとして、多くの企業が導入しています。
資格手当によって、身につけた知識や技術を正当に評価することは、社員のモチベーションアップやスキルアップにつながるため、企業の生産性や競争力の強化にも役立つでしょう。
当記事では、資格手当の種類や目的、費用相場などについて詳しく解説します。資格を業務に生かしつつ、収入アップも目指したいという人は、資格手当についてしっかり理解しておきましょう。
資格手当とは?
資格手当とは、社員が特定の資格を保有している場合や、業務に関連する資格を取得した場合に、企業が支給する手当のことです。業務遂行に必要な専門知識やスキルを評価する目的で設けられる福利厚生の一種ですが、法律による定めがないため、支給の有無や金額は企業ごとに異なります。
資格手当はあくまで任意制度(法定外福利厚生)ですが、厚生労働省の調査によると、約5割の企業が資格手当制度を導入しているとされています。
資格手当の支給条件や対象資格、金額などは会社の就業規則や賃金規程に明記されているのが一般的です。制度の利用を希望する場合は、まず自社の規定を確認し、対象となる資格や申請手続きを把握しましょう。
企業が資格手当を支給する目的
企業が資格手当を支給する目的は、「従業員のスキルアップを促進し、組織全体の成長を図ること」です。
手当によって資格取得を支援すれば、社員一人ひとりの専門性が高まり、結果として生産性や業務品質の向上につながります。また、資格手当制度は、「社員の成長を支援する企業」というポジティブな印象を生むため、採用活動にも好影響を与えるでしょう。
一方、社員側は努力が報酬に反映されることで、「評価されている」という実感が得られます。そして、そうした実感はモチベーションや仕事への満足度、学習意欲の向上に直結します。達成感を得られる仕組みがあれば、定着率の向上も期待できるでしょう。
これらの理由から、多くの企業が資格手当を戦略的に導入しています。
資格手当の種類2つ

資格手当は、「毎月の給与に上乗せされる資格手当」と「資格取得によって支給される合格報奨金」の2種類に分けられます。どちらも従業員の努力を評価し、スキルアップを後押しする目的で設けられており、支給条件や金額設定は職種や資格の難易度によって異なります。資格取得を検討する際は、忘れずに規定を確認しましょう。なお、企業によっては両方を併用しているケースもあります。
毎月の給与に上乗せされる「資格手当」
毎月の給与に上乗せして支給される資格手当は、企業側が指定する資格を保有または取得した従業員に対して、継続的に支払われる手当です。金額は1,000円~50,000円程度で設定されることが多く、資格の難易度や企業の規模によって幅があります。
「資格取得から3年間」など、支給期間に期限を設ける場合もありますが、企業によっては定年まで支給を続けるケースも見られます。定期的に支払われるため、仕事に対するモチベーションを維持・向上させる仕組みとしても有用です。
資格取得時に支給される「合格報奨金」
合格報奨金は、資格を取得した際に一度だけ支給されるお祝い金です。金額の目安は5,000円~200,000円程度で、資格手当よりも高額に設定される傾向にあります。
支給は1回限りですが、努力の成果がすぐに評価されるため、従業員の学習意欲は高まるでしょう。
資格手当は平均でいくら?
資格手当は法律上の義務ではなく、企業が任意で導入している制度なので、支給額は企業規模や職種、資格の種類によって異なります。国家資格のように専門性の高い資格では、数万円に達するケースもありますが、一般的には数千円~1万円台に設定されることが多いようです。
ちなみに、厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」を見ると、資格手当の平均支給額は月額1万8,800円と報告されています。なお、支給対象や期間の定め方も、企業ごとに異なります。
資格手当は課税対象になる?
基本給に上乗せして毎月支給される資格手当は、給与と同様に所得税や住民税の課税対象となります。そのため、1万円の資格手当が支給されたとしても、全額が手元に残るわけではありません。
一方で、業務に必須の資格や会社の指示で取得した資格については、非課税扱いとなるケースがあります。会社の業務に不可欠なものか、個人的なスキルアップの意味合いが強いかで扱いが分かれるため、判断が難しい場合は税務の専門家に確認するのがよいでしょう。
国家資格の資格手当相場一覧・支給例
| 資格名 | 資格手当の相場 |
|---|---|
| 宅地建物取引士 | 5,000円~30,000円程度 |
| 社会保険労務士 | 5,000円~50,000円程度 |
| 中小企業診断士 | 10,000円~30,000円程度 |
| 理学療法士 | 10,000円~20,000円程度 |
| 介護福祉士 | 5,000円~20,000円程度 |
| 危険物取扱者 | 1,000円~10,000円程度 |
国家資格は専門性が高く、有資格者の存在は企業の信頼性や品質向上に直結します。そのため、資格手当の対象となるケースが多い傾向にあります。主な資格と支給金額の相場は、次の通りです。
ここでは、それぞれの資格の概要と、支給金額の相場について解説します。ただし、金額は一般的な相場であり、実際の支給額は企業の規模や業種、職務内容などによって異なります。
宅地建物取引士
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引における重要事項の説明や、契約書類への記名を行う国家資格です。宅地建物取引業者には、事務所ごとに専任の宅建士を配置することが義務づけられているため、不動産業界にとっては欠かせない存在といえるでしょう。住宅販売・賃貸・不動産投資など幅広い分野で需要があり、金融業界や建設業界でも評価されています。
資格手当の相場は、5,000円~30,000円程度です。
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士)は、労働保険・社会保険に関する手続きや、企業の人事・労務管理に関する相談業務を行うための国家資格です。健康保険、厚生年金、雇用保険などに関連する書類作成や手続き代行、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成など、企業運営を支える重要な役割を担います。試験の合格率が低く難関資格として知られるため、専門性と希少性が評価されやすい資格でもあります。
資格手当の相場は、5,000円~50,000円程度です。
中小企業診断士
中小企業診断士は、企業の経営状態を総合的に診断し、成長戦略や経営計画に関する助言・支援を行う国家資格です。経営コンサルタントとして独立する人が多い傾向にありますが、社内で経営企画や事業再生に携わる場合にも、身につけた知識が役立ちます。試験では、経営分野の幅広い知識と実務力が問われるため、難易度は高い傾向にあります。
資格手当の相場は、10,000円~30,000円程度です。
理学療法士
理学療法士は、病気やけが、加齢などで運動機能が低下した人に対して、基本機能の回復・維持・改善を支援するリハビリテーションの専門職です。病院や介護施設だけでなく、スポーツ分野や教育分野、産業分野など幅広い職場で活躍できるのも、理学療法士の特徴といえるでしょう。医療・福祉分野では、理学療法士の有資格者数が施設運営の要件となる場合もあるため、資格手当を設ける職場が多く見られます。
資格手当の相場は約10,000円~20,000円程度です。
介護福祉士
介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格であり、専門的知識と技術をもって利用者の身体介護・生活支援を行うプロフェッショナルです。入所施設、通所施設、在宅サービス、医療機関など活躍の場は多岐にわかり、介護の現場においては、チームケアを行う際のリーダーとしての役割が期待されています。介護人材の確保が社会課題となるなか、資格手当によって定着率向上を図る事業所も増えています。
資格手当の相場は5,000円~20,000円程度ですが、勤務先(特別養護老人ホーム、養、介護老人保健施設、デイサービスなど)によって差があります。
危険物取扱者
危険物取扱者は、ガソリン・灯油・化学薬品といった危険物を安全に取り扱うための国家資格です。消防法によって、一定数量以上の危険物を扱う施設(化学工場やガソリンスタンド、石油タンクなど)には、有資格者の配置が義務づけられています。資格は「甲種」「乙種」「丙種」の3つに分かれており、甲種はすべての危険物についての取り扱いと定期点検、保安監督ができます。
資格手当の相場は、1,000円~10,000円程度です。
民間資格の資格手当相場一覧・支給例
会社の事業内容に関連する民間資格は、事業の効率化や質の向上につながりやすく、多くの企業で評価の対象となっています。代表的な資格と支給金額の相場は下記の通りですが、金額はあくまで目安です。実際の支給額・条件は、職場や職種、等級によって異なるので注意しましょう。
| 資格名 | 資格手当の相場 |
|---|---|
| ファイナンシャル・プランナー(1級・2級) | 10,000円~20,000円程度 |
| 日商簿記(1級・2級) | 3,000円~20,000円程度 |
| TOEIC® Listening&Reading Test(650点以上) | 3,000円~20,000円程度 |
| マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS) | 1,000円前後 |
ファイナンシャル・プランナー(FP)
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、家計管理や資産運用、保険、相続などの相談に応える「くらしとお金」の専門家です。資格取得を通じて、金融・税金・保険・不動産・住宅ローン・年金といった幅広い知識が身につくため、金融機関はもちろん一般企業の管理部門でも、その知識とスキルを生かせます。資格は1~3級に分かれており、学科試験と実技試験の両方に合格することで付与されます。
手当相場は10,000円~20,000円程度ですが、上位級ほど高めに設定される傾向があります。
日商簿記
日商簿記は、企業の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績や財政状態を管理するためのスキルを測る検定試験です。学習するなかで培われる知識・スキルは経理や財務、経営管理、マネジメントなど、幅広い部門で役立ちます。試験には初級・3級・2級・1級があり、1級に合格すれば税理士試験の受験資格を得られます。
手当相場は3,000円~20,000円程度で、2級以上に適用されるケースが目立ちます。
TOEIC® Listening&Reading Test
TOEIC® L&Rは、英語の「聞く力」と「読む力」を測るための試験です。試験結果が合否ではなく、10~990点のスコアで表示されるのが特徴で、転職や昇進、海外赴任などにおける語学力評価として広く活用されています。試験はマークシート方式で全200問。和訳や記述問題はありません。
手当相場は3,000円~20,000円程度で、一定のスコア以上を手当の条件にしている会社が多く見られます。
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)は、Word・Excel・PowerPointといった、Office製品に関する知識と操作スキルを証明する国際資格です。文書作成や表計算、資料作成など、日常業務の効率化に直結するスキルが身につくため、バックオフィスから営業支援まで幅広い職種で評価されています。
手当相場は、1,000円前後が中心です。
資格手当をもらうときの注意点
資格手当は、モチベーション向上や収入アップにつながる魅力的な制度ですが、支給条件や対象資格は企業によって大きく異なります。思わぬトラブルを防ぐためにも、制度の内容を正しく理解しておきましょう。
・会社規定をよく確認する
資格手当の対象資格や支給方法(毎月支給・一時金支給)、金額、申請手続きなどは会社ごとに定められています。部署や職種によって規定が異なる場合もあるため、就業規則を確認し、不明点があれば事前に問い合わせておくと安心です。
・支給が一定期間に限定される場合もある
資格手当の支給は、資格取得から3~5年の期間限定としている企業が多く、定年まで支給されるとは限りません。また、支給要件を満たさなくなったり、就業規則が変更になったりした場合は、支給が停止されることもあります。取得前に支給期間の有無を確認しておきましょう。
・すでに持っている資格には手当が出ない場合がある
資格手当を「在職中に取得した資格を評価する制度」として運用している企業が多く、入社前に取得した資格には、手当が支給されない場合もあります。転職前に資格を取るかどうかで迷う場合は、入社後の支給条件や会社の補助制度も考慮して判断するとよいでしょう。
まとめ
資格手当は、社員の専門性や能力を正しく評価し、成長を後押しする制度です。企業にとっては生産性や業務品質の向上、離職防止につながり、従業員にとっては収入アップやモチベーションアップの源となります。
ただし、支給条件や対象資格、支給期間は企業ごとに異なるので、制度を活用する際には就業規則や賃金規程を確認することが重要です。企業によっては、入社前に取得した資格が対象外となったり、支給が一定期間に限定されたりする場合もあるので注意しましょう。
自分のキャリアプランに合った資格を取得し、ぜひとも専門性の向上と収入アップを両立させてください。
※当記事は2025年10月時点の情報をもとに作成しています