
金融業界で働きたい、あるいは今の職場でキャリアアップを目指したいと考える人にとって、金融関連の資格は目標実現のための大きな強みとなります。しかし、金融系資格にはさまざまな種類があるため、「どの金融資格が役立つのかわからない」「本当に転職や昇進に有利になるのだろうか」と悩む方も少なくありません。
当記事では、金融関連の資格を取るメリットやおすすめの資格、業界別の役立つ資格の特徴などを解説します。金融資格取得を通じて専門性の高い知識・スキルを習得し、希望の就職・転職や安定したキャリアにつなげましょう。
金融系の資格を取得するメリット
金融系の仕事に就くにあたって、特別な資格は必要ありません。しかし、資格を取得すれば社会的な信頼度が高まり、転職やキャリアアップで有利に働くでしょう。加えて、資格手当などの待遇向上につながる可能性もあります。
ここでは、金融系の資格を取得するメリットについて解説します。
転職やキャリアアップで有利になりやすい
金融業界は高い専門性が求められるため、就職・転職においては知識やスキルを証明できる資格が強みとなります。資格のなかには、有資格者だけが特定の業務を行える「業務独占資格」などもあり、取得すれば就職・転職時の強力な武器となるでしょう。
さらに、資格取得を通じて専門知識や実務能力が磨けるため、結果的にスキルアップやキャリアアップにもつながります。希望する職種や転職先に必要な知識・スキルを見極めて、適切な資格を取得しましょう。どれを選ぶかで迷った場合は、汎用性が高く幅広い分野で評価される資格を選ぶのも一案です。
資格手当がつくことが多い
金融業界をはじめとする多くの企業では、資格取得者に対して資格手当を支給する制度を設けています。これは従業員のスキル向上・モチベーション向上を目的とした仕組みで、資格を取得すれば業務上の評価だけでなく、収入アップにもつながります。
なかには資格取得にかかる教材費、受験料を補助してくれる企業もあり、その場合は費用の負担を抑えつつ、スキルアップを目指せるでしょう。働きながら資格取得を目指す人は、現在の職場に資格手当の制度があるかどうかを確認してみるのがおすすめです。
また、転職先を探す際に、資格支援制度が充実している企業を選ぶのも有効な方法です。資格は自身のキャリア形成だけでなく、待遇面での向上にも結びつくため、積極的にチャレンジするとよいでしょう。
金融系のおすすめ資格10選

金融業界には、キャリアアップや転職でアピールできる資格が数多くあります。ここでは、銀行・証券・保険などの幅広い分野で役立ち、高い専門性が身につく金融関連資格を10種紹介します。
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP技能検定)は、相談者のライフプランに基づいて資産設計やアドバイスを行うための国家検定で、日本FP協会、一般社団法人金融財政事情研究会の2団体が実施しています。試験は1級から3級までに分かれており、学科試験と実技試験に合格することで「ファイナンシャル・プランニング技能士」を名乗れます。
学科試験では、「ライフプランニング」「リスク管理」「金融資産運用」などに関する問題が出題され、対策学習を通じて家計管理や税制、保険、年金制度、資産運用などの幅広い知識が身につくでしょう。なお、実技試験は実施団体ごとに出題科目が異なります。
2025年1月に行われた2級の合格率は、FP協会が学科44.4%・実技48.8%、きんざいは学科19.79%・実技43.16%でした。一方、3級試験は、FP協会が学科85.4%・実技85.6%(2024年10月~2025年2月)、きんざいが学科19.35%・実技50.00%(2025年5月)となっており、比較的合格しやすい水準と言えます。独学でも挑戦できますが、効率的に取得したい場合は、資格学校や通信講座を活用するのがおすすめです。
2級を取得すれば、法人向けの提案力や分析力も身につくため、銀行や保険会社、証券会社、不動産会社などの職場で高く評価されます。お金に関する知識とスキルは、一般企業で労務や福利厚生に携わる際にも役立つでしょう。
出典:日本FP協会「FP技能士の取得者数 及び 試験結果データ」
証券アナリスト(CMA)
証券アナリスト(CMA)は、正式名称を「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」と言い、所定の教育講座(CMA講座)を受講した上で試験に合格し、一定の要件を満たすことで認定される資格です。講座では投資価値の分析・評価やファイナンス理論、金融商品の仕組みなどを体系的に学習でき、資格取得後はリサーチアナリストやエコノミスト、ファンドマネージャー、クレジットアナリストなど、幅広い職種で活躍できます。
試験は1次・2次に分かれており、2025年の第1次春試験の合格率は48.4%、第2次試験は44.4%でした。難易度は中程度ですが試験範囲が広いため、出題頻度の高い分野を把握した上で、計画的・網羅的に学習を進める必要があるでしょう。独学も不可能ではありませんが、基礎知識に不安がある場合は、予備校や講座を活用するのが得策です。
CMAは「金融・投資のプロフェッショナル」としての証しであり、その専門性を武器にキャリアの幅を広げられる資格です。
出典:公益社団法人日本証券アナリスト協会「試験データ」、公益社団法人日本証券アナリスト協会「試験データ」
証券外務員
証券外務員は、証券会社や銀行などに所属し、顧客に対して株式や債券といった金融商品の販売・勧誘を行うために必要な資格です。証券外務員として活動するには、外務員資格試験に合格した上で、所属先を通じて外務員登録を受ける必要があります。
資格取得を通じて、金融商品取引法などの関連法令や金融商品の仕組み、証券市場の基礎知識を幅広く学べるため、金融営業に携わるにあたって最初に取得するケースが多いのがこの資格です。なお、証券外務員には一種と二種があり、一種を取得すれば信用取引やデリバティブ取引を含むほぼすべての金融商品を取り扱うことができます。
2024年度の合格率は二種が64.5%、一種が73.0%となっており、難易度はそれほど高くありません。効率よく合格を目指したい場合は、試験範囲や配点を把握した上で過去問演習とテキスト学習を繰り返し、必要な知識を習得しましょう。
証券外務員は証券会社や銀行、保険会社などで営業職に携わりたい人はもちろん、金融業界への就職を目指す人にもおすすめです。
出典:日本証券業協会「過去2年間の受験者数、合格者数及び合格率(一般受験者)」
日商簿記1級
日商簿記1級は、公益社団法人日本商工会議所が実施する簿記検定の最上位資格であり、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算といった高度な会計知識を修得していることを証明するものです。
簿記を学ぶことで、企業の経理業務に必要なスキルはもちろん、財務諸表の読解力や分析力、コスト感覚などが身につくため、企業の経理や財務部門、監査法人、税理士事務所などで、その知識やスキルを生かせます。また、合格すると税理士試験の受験資格を得られるのも、魅力の一つです。
難易度は高く、2025年6月に実施された第170回統一試験の合格率は14.0%でした。平均合格率も8~10%前後の低水準となっており、独学での合格は難しいとされています。最新の出題傾向に対応できるスクールや通信講座を活用して、効率的に合格を目指しましょう。
税理士や公認会計士などの難関資格を目指す人、金融機関や企業の経理・財務部門で専門性を高めたい人には、特におすすめの資格です。
出典:簿記「受験者データ」
税理士
税理士は、企業や個人に向けて、法人税・所得税といった各種税金に関するアドバイスや、申告書の作成などを行う国家資格です。税理士には、「税務の代理業務」「税務相談」「税務書類の作成」という3つの独占業務が認められており、税理士資格を持たない人はこれらの業務を行えません。
資格取得を通じて、税務・会計の知識はもちろん、会社法、民法、商法といった関連法規の知識も身につくため、監査法人や税理士法人、コンサルティングファーム、一般企業など幅広い分野で活躍できます。
試験は会計科目2科目と税法科目9科目で構成され、11科目から5科目を選んで受験する必要があります。試験範囲が広いために難易度は高く、2024年度の合格率は16.6%でした。ただし、科目合格制(合格した科目は次回以降の受験が免除される制度)を採用しているため、一度に5科目に合格する必要はありません。
税理士は社会全体で求められる専門職であり、実績を積んだ上で独立開業を目指す人も少なくありません。その観点からすると、「長期にわたって活躍できる資格」と言えるでしょう。
出典:国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果表(試験地別)」
公認会計士
公認会計士は、会計や税務に関する専門的な知識・技能を持ち、企業の財務諸表の監査や税務相談を担う国家資格です。企業が作成した財務諸表が法令、会計基準に従って正しく作成されているかを検証し、監査報告書を作成するのが主な業務で、価証券報告書や内部統制報告書などの作成も公認会計士の独占業務となっています。
資格取得を通じて会計や税務、監査に関する専門知識と、高い分析力・問題解決力が身につくため、活躍の場は監査法人や会計事務所、コンサルティングファーム、官公庁、一般企業、独立開業など多岐にわたります。
試験は短答式と論文式に分かれており、2024年度の合格率は短答式が約12.0%、論文式が37.0%、最終合格率はわずか7.4%でした。非常に難易度が高いため、すべての科目でバランスのとれた高度な理解が求められるでしょう。
公認会計士は弁護士や医師と並ぶ「三大国家資格」とされており、合格すれば企業経営を支える専門家として高い信頼を得られます。
出典:公認会計士・監査審査会「令和6年公認会計士試験の合格発表の概要について」、公認会計士・監査審査会「令和6年公認会計士試験合格者調」
保険募集人
保険募集人は、生命保険会社や損害保険会社、銀行などで、保険商品の提案・説明、契約締結の手続きといった業務を行うのに必要な資格です。資格は生命保険募集人資格と損害保険募集人資格に分かれており、それぞれに受験科目や必要な知識が異なります。
生命保険募集人資格を取得するには、生命保険会社に入社して基礎講習を受講した後、「一般課程試験」を受験して合格する必要があります。試験は生命保険に関する基礎知識を問うもので、法律や商品知識、募集ルール、顧客対応のマナーなど、実務に直結する内容が出題されます。
一方の損害保険募集人資格も、損害保険会社に入社した後に基礎講習を受講し、「損保一般試験」に合格しなければなりません。試験では損害保険商品を販売するための基礎知識、営業手法などが問われ、合格すれば自動車保険や火災保険などの各商品を取り扱えるようになります。
合格率は公表されていませんが、生命保険一般課程試験が約80%、損保一般試験は90%以上と言われており、難易度は比較的低めです。ただし、専門用語が多いので、公式テキストと過去問を活用して、しっかり基礎固めを行う必要があるでしょう。保険募集人には、顧客に商品を説明するスキルも求められるため、研修や実践を通じて営業力を磨くことも大切です。
アクチュアリー
アクチュアリーは、生命保険や損害保険、企業年金などの金融分野で、保険料率・支払保険金額の算定をはじめとする数理業務を担当する専門職です。医療、経済、自然災害などに関するさまざまなデータを分析し、保険料・支払保険金額の算定、年金給付金額の算定などを行うのが主な役割で、「保険数理人」「年金数理人」とも呼ばれます。
資格取得を通じて、生命保険数理、損害保険数理、年金数理、会計・経済・投資理論などを体系的に学習でき、取得後は生命保険会社や損害保険会社、信託銀行の年金部門、監査法人、省庁などで活躍できます。
資格取得にあたっては、第1次試験(基礎科目)と第2次試験(専門科目)に合格することが必要です。第1次試験は数学、生保数理、損保数理、年金数理、会計・経済・投資理論の5科目で構成され、すべて合格すれば準会員に認定されます。一方の第2次試験は生保コース、損保コース、年金コースのいずれかを選択する仕組みです。
日本でアクチュアリーとして働く場合は、最上位の正会員を取得するのが一般的ですが、正会員になるには第2次試験に合格した後、研修受講や理事会の承認を得なければなりません。全科目合格まで平均5~8年を要する難関資格ですが、社会的に保険や年金への関心が高まるなか、アクチュアリーの果たす役割は今後ますます重要になるでしょう。
出典:公益社団法人日本アクチュアリー会「日本アクチュアリー会 2024 年度資格試験結果について」
経営学修士(MBA)
MBAとは、経営学の大学院修士課程を修了することで授与される学位(修士号)であり、国家資格や民間資格ではありません。MBAは国内外のビジネススクールで取得することが可能で、取得期間は一般的に1~2年が目安です。
MBAプログラムでは、経営戦略、マーケティング、ファイナンス、人材マネジメントなど、企業経営に必要な知識を体系的に学ぶとともに、論理的思考力や課題解決力、コミュニケーション力といったスキルを磨きます。
資格ではなく学位なので、難易度は入試倍率で表され、国内では平均1.5倍程度(高いところでは4倍以上)となっています。入学後は時間をかけて単位を修得する必要があるため、スクールの説明会などでカリキュラムや教育理念を確認した上で、自身のキャリアに合ったプログラムを選びましょう。
取得後は、監査法人やコンサルティング会社、金融機関、外資系企業などで高い評価が得られます。また、MBAプログラムを通じて多様な業界・専門職に人脈ができるため、ビジネスリーダーを志す人にとっては有用な選択肢となるでしょう。
銀行業務検定
銀行業務検定とは、銀行や保険、証券といった金融機関の行職員を対象に、業務遂行に必要な実務知識と技能、応用力を測る検定試験です。試験種目は法務・財務・税務・外国為替・融資渉外・証券・年金アドバイザーなど36種目に分かれており、取得を通じて財務分析、税務処理、融資判断、関連法令などの専門知識が習得できます。
難易度は科目ごとに異なり、2024年6月実施の第158回試験では、法務2級の合格率が22.42%、財務2級は29.23%、法務3級は39.78%、財務3級は33.86%となっていました。なお、試験は業務に直結する内容が多く、金融機関によっては資格取得が推奨されている場合もあります。
基礎知識から実務応用まで段階的に力を伸ばせるため、金融業界で着実にスキルアップを目指す人には最適な資格と言えるでしょう。
【業界別】金融系の業界で役立つ資格の特徴
ひと口に金融業界と言っても、銀行、証券、保険、コンサルティングなど、分野ごとに求められる知識やスキルは異なります。ここでは、各業界で役立つ資格の特徴を解説します。
銀行業界
銀行業界は都市銀行、地方銀行、信託銀行などに分かれ、預金や為替、融資といった基本業務のほか、保険や資産運用商品の販売も行います。営業職や資産運用アドバイザーとして働く際は、専門知識を裏づける資格を取得して、顧客の信頼獲得につなげるのが望ましいでしょう。
たとえば、ファイナンシャル・プランニング技能士を取得すれば、税金や年金、投資などの幅広い知識が身につきます。証券外務員は株式や投資信託を取り扱うために必須の資格で、多様化する金融商品・資産形成商品にも対応が可能です。一方、銀行業務検定は実務に直結する知識や技能を証明できるため、キャリアアップや昇進の評価向上にも役立つでしょう。銀行業界を志す方にとって、これらの資格は業務の幅を広げるための強力な支えとなるはずです。
証券業界
証券会社を中心とする証券業界では、投資家の資産運用を支援し、金融商品・資産形成商品の売買を仲介する役割を担います。主な業務として挙げられるのは、個人投資家に口座開設や投資を提案する「リテール」、株式や市場情報を収集・分析する「リサーチ」、企業の資金調達を支援する「インベストメントバンキング」などです。これらの仕事を行うには高度な専門知識・スキルが求められるため、関連資格を取得することは非常に有用です。
たとえば、証券外務員資格がなければ、有価証券の販売や勧誘はできません。証券アナリスト資格は、財務分析や証券分析、市場調査を通じて投資価値を評価する力を証明するもので、顧客からの信頼獲得につながります。証券業界を志望する人にとって、こうした資格はキャリア形成の第一歩となるでしょう。
保険業界
保険業界では、生命保険会社や損害保険会社、代理店などを拠点に、病気や事故といった予期せぬ事態に備えるサービスを提供します。営業職では顧客のライフプランに合わせた保険提案が求められ、事務職でも保険の専門知識を生かした正確で迅速な処理が必要です。
業務に従事する上で必須となるのが生命保険募集人・損害保険募集人の資格で、これがなければ保険商品の勧誘や販売ができません。また、アクチュアリー資格を取得すればリスクを数理的に分析し、保険商品の設計や企業年金の運営などで高度な専門性を発揮できます。保険業界で専門性を高めたい方は、生命保険募集人・損害保険募集人、アクチュアリーの資格取得を目指すとよいでしょう。
まとめ
金融系の資格は、転職やキャリアアップの場面で有利に働くだけでなく、収入面のメリットも期待できます。税理士や公認会計士といった「業務独占資格」と、証券外務員、保険募集人のように「特定の分野で働くための資格」に分類されるのも、金融系の資格の特徴です。
ただし、銀行、証券、保険といった業界ごとに必要とされる資格は異なるため、まずは自分が進みたい分野を明確にし、その業界で必須とされる資格から取り組むとよいでしょう。資格取得の過程で得られる知識やスキルは、業務の質を高めるだけでなく、職場や顧客からの信頼にもつながります。
※当記事は2025年9月時点の情報をもとに作成しています