普段、何気なく使っている言葉のなかには、漢字になった途端、難しくて読めなくなるものがたくさんあります。日本語って、やっぱり奥が深いですよね。今回は、そんな難読漢字から、当サイトのロゴにも使われている「シカ(鹿)」にまつわる言葉を3つピックアップしました。全問正解を目指して、チャレンジしましょう!
第1問 「氈鹿」の読み方は?
主に山岳地帯に住む動物で、国の特別天然記念物にも指定されています。「氈」というのは毛織の敷物のことで、読み方は「せん」。織る際に、この動物の毛が使われたことから、「氈鹿」と書くようになったそうです。
第1問の答え
答えは「カモシカ」です。
カモシカは、偶蹄目ウシ科カモシカ属の哺乳類。名前に「鹿」の字が使われていますが、実はシカではなくウシやヤギの仲間です。ニホンカモシカ、タテガミカモシカ、タイワンカモシカの3種類がおり、日本固有の種であるニホンカモシカは、国の特別天然記念物に指定されています。
ウシ科のほかの動物と同様、短い角を持っていて、体長は100~120cmほど。木の葉や樹皮、果実などが主食で、体格はオスとメスでほとんど変わりません。日本では、本州(東北地方から中部地方)・四国・九州の山岳地帯に生息しており、岩場をかけ登るのに適した太い足と、2つに分かれたひづめが特徴です。
よく、細く美しい足の女性を「カモシカのような足」と表現しますが、これは昔の人がレイヨウ(草原に住むインパラやガゼルの総称で、スラッと細い足が特徴)とカモシカを混同したことで生まれた言葉。実際のカモシカは、たくましく丈夫で太い足をしているんです。
なぜ混同されたかと言うと、昔はレイヨウにもカモシカにも、同じ「羚羊」という漢字を当てていたから。つまり、細く美しい足は「レイヨウのような足」と表現するのが正しいわけです。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
小学館の図鑑NEO〔新版〕動物|小学館
第2問 「馴鹿」の読み方は?
12月になると、街のあちこちでこの動物をモチーフにした装飾品を見かけます。北ヨーロッパやシベリアでは、古くから家畜として飼育されており、「人間に馴れている」という意味で、この漢字が当てられたのだとか。
第2問の答え
答えは「トナカイ」です。
トナカイは、偶蹄目シカ科の哺乳動物で、生息地は北ヨーロッパ、シベリア、北アメリカ、グリーンランドなど。英語名はレインディア(Reindeer)ですが、北アメリカ産の野生種はカリブー(Caribou)と呼ばれています。
体長は120〜220cmほどで、オスはメスの2倍近い体格。一般的にシカの仲間は、オスだけが立派な角を持っていますが、トナカイの場合、メスにも角があるのが特徴です。普段は大きな群れで生活していますが、群れが大きい分たくさんの食料が必要で、草やコケ、キノコなどを求めて、年間数100kmから数1000kmも移動するそうですよ。
ちなみに、トナカイが角を落とす季節は秋から冬にかけてですが、メスの角が生え変わるのは、春に出産を終えてから。クリスマスのトナカイには角があるので、サンタクロースのソリを引いているのは、メスのトナカイかもしれませんね。
なお、トナカイがクリスマスの象徴になったのは、1823年に出版された「A Visit from Saint Nicholas」という本が起源だとか。サンタクロースのモデルとされる聖ニコラウスはラクダを使用していたそうですが、本に収められた詩には、空を飛ぶトナカイのソリが描かれており、その神秘的なイメージが世界中に浸透したとされています。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
小学館の図鑑NEO〔新版〕動物|小学館
クリスマスのまえのばん- サンタクロースがやってきた|偕成社
第3問 「鹿尾菜」の読み方は?
「菜」という字が使われていることから、「何かの植物では?」「花の呼び名かも」と思うかもしれませんが、実は海に生息する海藻の名前です。煮物や炊き込みごはんにして食べるイメージが強いと言えば……。もう、わかりますよね?
第3問の答え
答えは「ひじき」です。
ひじきは、ホンダワラ科に分類される海藻(褐藻)です。体長は50〜100cmで、太さは3〜4mm程度。春から初夏にかけて繁茂し、円柱状の茎にプリプリした小枝や葉をたくさんつけます。日本における主な産地は、房総半島、伊勢志摩、紀伊半島、四国、九州地区などですが、現在市場に出回っている国産ひじきは10%ほど。ほとんどが韓国や中国から輸入されています。
収穫したばかりのひじきは渋みがあるため、釜で長時間蒸し煮にし、天日干しをした後に、乾燥ひじきとして出荷されるのが一般的です。なぜ、「鹿尾菜」という漢字が当てられたかと言うと、状態のよいひじきはピンと跳ね上がっていて、シカの尾のように見えるからだとか。ちなみに、岩場に生息しているときのひじきは、黒ではなく褐色をしています。
日本では、縄文時代からひじきを食べていたとされており、奈良時代以降は神への供えものとしても活用されてきました。また、平安時代の歌物語である「伊勢物語」には、天才詩人である在原業平が、好きになった女性にひじき藻を贈ったというエピソードが書かれています。ひじきがその昔、男女間のプレゼントに使われていたのは驚きですよね。
なお、ひじきには、骨・歯を作るカルシウムや、便秘・生活習慣病対策に役立つ食物繊維、抗酸化作用のあるβ-カロテンなどが多く含まれています。煮物や炊き込みごはんで食べるのが定番ですが、白あえやサラダにするのもおすすめですよ。
<参考>
日本大百科全書(ニッポニカ)|小学館
日本ひじき協議会公式ホームページ
伊勢物語|岩波書店